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かつてのクマガイ
誰もクマガイの心の深層を知らない。
内に秘めた情念と怒りを知らない。
その気性を知らない。
(よくもやってくれたな)
アリスとの邂逅、時間の共有によって変わりつつあったクマガイ。
その性格は、素直なものになっていった。
それはアリスの影響を受けた部分が大きい。
(よくもやってくれたな)
だが、だからこそ、アリス亡き今、タガが外れてしまった。
鳴りを潜めていた元のクマガイが、呼び戻されてしまった。
「よくもやってくれたな」
クマガイは元々、逆恨みばかりを繰り返していた。
そして衝動的に暴れるばかりだった。
浅慮で短絡的。
いわゆる愚者である。
その自我が完全に戻ってしまった。
無駄にプライドが高く、自分の気持ちにばかり敏感で、傷ついたままに暴れる。
そんな、かつてのクマガイに戻ってしまったのだ。
