2123/2233
下等な造りもの
黒球の侵食は、対象のネガティブな感情に食らいついて引き起こすもの。
だから、クマガイの心は簡単に侵食出来ると思っていた。
しかし、実際には上手く行かず、睨まれている始末。
クマガイの目は怒りに燃えていて、黒球の侵食を受け付けない。
(全く効かないなんてことがあるのか!?)
規格外と言える程の強い耐性を備えたクマガイに驚いた黒球。
しかし気を持ち直し、口悪く罵る。
「下等な造りもののくせに」
この言葉は、ある種の負け惜しみからのもの。
黒球が精神的に劣勢であるからこそ出た言葉なのだが、クマガイには届かなかった。
クマガイには、何かに、誰かに虐げられた記憶ばかりがある。
お陰で、更なる怒りのトリガーとなった。
「じゃあお前は造りものじゃないのかよ」
その瞬間、クマガイの姿が消えた様に黒球には見えた。
あまりの速度について行けていないのだ。
咄嗟に後ろに跳んだデシネ。
その胸部に、爪撃の痕がはしった。
黒球にダメージが通る。




