穏便に話
「ひとまず穏便に話せないかな」
そう言うデシネの顔は、どこか軽薄そうに見えた。
見た目はデシネだ。
だが、本来のデシネとはかけ離れた性格に見える。
(こんな性格なのかよ。 何か余計なもん見せられてる気がするな)
クマガイは、黒球の意思に触れたことはあっても、この様な性格だとは知らなかった。
戸惑いと苛立ちを隠そうとせず、クマガイは黒球に突っかかる。
「何が穏便だよ。 ふざけるな」
クマガイは不意に黒球の性格に触れて、生理的に受け付けないとはこういうことか、などと気付きを得た。
造られた記憶の中のクマガイは、生理的に受け付けないと言われ、多くの者に忌避されたものだった。
周りにどう思われていたのか、忌避の感情がどういうものだったかを理解出来たクマガイは、複雑な思いを抱え、かつ、黒球に怒りをぶつける。
「殺してやるからかかってこいや」
他意はないが、その口調は無意識にアリスに似ていた。
いや、口調だけではない。
ギラついた目つきもアリスに似てきている。
対して黒球憑きのデシネは、おどける様に肩をすくめ、首を振った。
「クマガイ……と言ったかな? 君は何だか突っかかるね。 ま、無理もないか。 君は……」
「さっさと本題を言えよ」




