伝わる震え
猛攻を捌くデシネの動きは異常で、ある瞬間は人の形のまま異様な姿勢となったり、またある瞬間には人の形が崩れ、もはや人外なのであるが、しかし動きは人間のそれであり、最小の動きで払いのけたりもする。
動きを見れば、デシネが再び人ならぬ存在となっていることは明らか。
黒球の魂がアリスの魂の糸を伝い、空間の壁を超えて、アリスと手を重ねていたデシネに憑いたのだ。
ガインが、確信をもって叫ぶ。
「司祭が体を乗っ取られたッ!!」
ガインの声には明らかに怒気がある。
その感情は、黒球に対する敵意、そして、デシネとアリスに対する苛立ちに起因していた。
「おぉぉッッ!!」
(こうなることを予想しなかったのか!? 貴様らは!!)
ガインはデシネを攻めながら、アリスの様子も一瞥して驚いた。
小刻みに震えるアリスは白目を剥いて泡を吹き、穴倉に抱きつく様に接触している。
すぐに穴倉も同じ様に小刻みに震える動きをし始めた。
デシネも時折、震えている。
(接触すると乗っ取られるのか!?)
ガインは黒球を警戒して、ひとまず退こうとしたが、後ろからイゴールに羽交い締めにされた。
「何ッ!?」
その瞬間、どす黒いものが流れ込む。
ガインは意識を失いながら、小刻みに震え出す。




