闇の魂
「……?」
怪訝な顔をしたクマガイ。
力を合わせると言われても、想像がつかない。
イルマに目を向けると、暗い表情をしている。
先刻までの研究者然としたイルマはそこになく、思い詰めた様子が見て取れる。
先程までそんな雰囲気ではなかったはずなのに、今はもう重苦しささえ漂う。
「何をやるのさ、一体」
「……」
イルマも、デシネも、ある種の決意めいた顔をしていて、ただならぬ雰囲気だ。
いつも能天気なアリスでさえも、やや神妙な面持ちで、「まぁ、ちょっと見とけや」と言うのみ。
そしてアリスが手を出すと、デシネが自分の手を重ねた。
真っ赤な瞳を閉じ、口を開くアリス。
「Revolution」
一呼吸おいて、暗黒の気と金色の気がアリスの周りに渦巻いた。
閉じた瞼を開くと、瞳が金色になっていて、周りの全てが暗転して見える。
アリスが赤い瞳で見る天使の空間は煌めいていたが、金色の瞳には、暗転した世界が映っているのだ。
暗転世界の中では、生物の肉体の色と形が見えない。
人も魔物も、魂の色と形で見える。
アリスが目に力を込めると、天使の空間が透けて見え、その向こうに、元いた場所が見えた。
そこには何もないが、アリスは、己の魂を細長い形に変え、その、元いた場所へと伸ばした。
アリスの魂の糸は空間の壁を貫き超えて、“元いた場所”へと届く。
その時、デシネが後ろ暗い感情を胸のうちに宿らせた。
イルマと共に過ごせなかったこと、自分だけが年齢を重ねたこと、自分の力ではイルマを救えなかったことを想って、だ。
すると、空間の壁の向こう側に、小さく、どす黒い魂の種火が生まれ、揺らめいた。
種火はあっという間に大きくなり、燃え盛る闇の魂となる。




