2095/2233
振り降ろされる爪
何故ならば、フォンテスに期待する部分が大きかったから。
吸血鬼たちの態度から、彼らのリーダーであることが容易に分かったので、頼れることならフォンテスがよかったからだ。
しかし、その望みは早々に潰えた。
となると、最有力候補に躍り出るのは穴倉である。
「あの……」
「何?」
イルマの声に即反応する穴倉。
だが、その声からは協力的な雰囲気はかんじない。
むしろ視線は冷やか。
興味なさげな虚ろな目は、すぐにイルマから逸れた。
しかしイルマはその逸れた視線に向かって体を乗り出す。
穴倉が軽く睨む様な目になったが、イルマは意を決して言葉を浴びせた。
それは少し怒気を孕んでいて、誰の耳にも攻撃的に聞こえた。
「ちゃんと話を聞いて下さい!」
その瞬間、穴倉の爪がイルマに向かって振り降ろされた。




