フォンテスによる統率
その顔ぶれは壮観だ。
人魔入り乱れ、異種族が一同に会した形。
得体の知れないアリスたち、聖騎士、人間、吸血鬼たち、そして夫。
この中でイルマと最も遠い勢力は吸血鬼で間違いない。
吸血鬼は通常、人間を下に見ている。
補食対象として見ている……はずだ。
しかしフォンテスからは、見下しの態度も、食欲の類いもかんじない。
イルマは、吸血鬼といえば人間の血を吸う、野蛮な強者という先入観があったので、フォンテスの態度に内心面食らった。
(吸血鬼って、すぐ襲いかかって来るって聞いていたけど……!?)
このイルマの思考は、偏見でもあり、適切でもある。
多くの吸血鬼はイルマの考えている通りの性格をしている。
それどころか、この場にいる吸血鬼たちも、少し前まではそうだった。
だが、一種の意識改革がなされ、フォンテス以下、この場にいる吸血鬼たちは、踏みとどまることが出来る。
元来、気性が荒い吸血鬼にとっては、踏みとどまり聞く耳を持つことは、難易度が高いはずだ。
だが、自身を人間だと思って育ったフォンテスには、吸血鬼にはない価値観が根付いていて、それが吸血鬼たちに伝播し始めている。
その結果が、フォンテスによる統率だ。




