親しみと嬉しい気持ち
穴倉を見ると、熱線を撃ち終わった額の割れからは熱気が出ていた。
当たったものを容赦なく貫き焼き切る、穴倉の混血熱線砲の熱気は、まだ穴倉の体内に健在で、穴倉の呼吸に合わせて、鼻と口から何度も漏れた。
穴倉の額がうねる様に閉じ、割れ目が消えると、熱気も見えなくなった。
ある程度の熱を逃がし終わったから額を閉じたのか、額を閉じた時に何らかの冷却方法が開始されたのかなど、穴倉をぼんやり見ながら考えるクマガイだが答えは出ない。
そうこうしているうちに穴倉と目が合った。
先刻の穴倉を思い出しそうになり、視線を外して意識を逸らそうとしたクマガイだが、穴倉の喋りが一瞬速く始まってしまう。
「手応えがないよ。 どうする?」
その言葉はクマガイへの視線と共に投げかけられていて、クマガイは「なに、俺に言ってんの!?」と、少し声を張った。
すると穴倉は、当然だろうといった顔で、「え? うん」と頷き、キョトンとしている。
フッと笑ってしまったクマガイは、苛立ちが胸のうちからスーッと消えるのをかんじながら、「俺に聞いてどうすんだよ」とぼやく。この時、クマガイにあるのは不快感や苛立ちではなく、少しの親しみと嬉しい気持ちで、敵意のない状態になっていた。
穴倉の態度は相変わらず他意がない。
特別な意識なくクマガイに話しかけているのが分かるクマガイは、自分が穴倉にとって、話しかける存在なのだと認識出来て嬉しかったのだ。




