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なにごと!?
少し癪にさわったものの、クマガイはそれで怒りを爆発させることなく、また、陰気な憎しみを募らせることもなかった。
穴倉から視線を外してみても、根本的な解決になるわけではないが、しかし一旦耐え忍ぶという、人間が社会生活を送る際に選択しがちな無難な行動をすることで、クマガイは自分を慰める。
(あー、偉い、俺! よく我慢した! 人として成長してる! 人じゃないけど)
しばらくは穴倉の顔も見たくない、顔を見ないと心に決めたクマガイだったが、しかし、その決意は次の瞬間に壊れることになった。
「熱線砲!!」
穴倉が虚空に向かって熱線を放ったのだ。
クマガイは、穴倉から外した視線をアリスに向けようとしたところだった。
だが穴倉の絶叫を聞いて、反射的に振り返る。
「なにごと!?」
見ると穴倉の額から放つ熱線は、首の動きに連動してはしる。
無数の煌めきを貫いているが、煌めきに変化はない。
そのうち、熱線が次第に途切れ、遂には消えた。




