ダメなんか?
「いや、それは……」
アリスの不意な一言に驚くジャン・ジャックは首を振る。
天使の魂が憑いていたミラーをすかさず生き返らせるのは、さすがに短絡的すぎると思ったのだ。
とはいえ、ハッキリ言えず、ジャン・ジャックは煮え切らない態度。
そんなジャン・ジャックの顔をまじまじと見つめるアリスは、不思議そうな顔をした。
「ダメなんか?」
首を傾げるアリス。
そして、何がダメなのか理解不能といった顔に微妙に大きく変わる。
ジャン・ジャックは、そんなアリスの顔を見て、言う通りにしてやりたいと強く思う。
だが、アリスを止めたいとも強く思った。
神官であるミラーを生き返らせて、もし天使の魂が再度入り込んだら、戦闘再開となるのは必至だ。
これを建前上の理由とし、ジャン・ジャックは、申し訳なさそうにアリスに進言する。
「少し……、様子を見た方が……、いいかもしれません……。 生き返らせたら、天使も甦る可能性がないではないですし……」
「ふーん、なるほどだわ。 まぁ、お医者さんが言うんなら、それが正しいやつかもしれんわ」
意外に素直なアリスの返答。
ジャン・ジャックの肩の力が抜け、安堵の息が漏れる。
「ふう……」
だがそれは、アリスの耳には届いていない。
あぐらをかき、腕を組んだアリスは、しばらく無言で、珍しく静かに考えている。




