どうするコレェ
ガインは、そんなデシネと妻を眺めていたが、不意にアリスに話しかけられて、視線をアリスに移した。
アリスは眉を段違いにし、牙をむき出しにして喋る。
美しい顔だが品なく崩れる様子が、アリスらしいとガインは思った。
「何であんなよぉ、壁を突破出来たんだよ、おめぇよぉ」
刻々と変化する状況の中で、アリスのこの表情は変わらない。
それはガインを何だか安堵させ、微笑ませた。
そして軽く思案するガイン。
天使の魂、そしてミラーを両断した時のことを思い出す。
「己は、稀にではあるが、普段と比べ物にならん、とんでもない力が出ることがある。 それかもしれん」
「ほーん。 その力、今出してほしいわ。 そんでここから俺たちを出せや」
「出来ることならそうしたいがな」
「出来んのかい! どうするコレェ」
軽口を交えて会話するアリスとガイン。
その表情は、天使の魂との交戦時と比べると、だいぶリラックスしている。
空間に溢れる異様な光を目にしながらも、何も起こらないとかんじれば、すかさず休息に入ることが出来るお互いの図太さに笑う二人。
ガインは、もう一度デシネを見た。
するとデシネは、真剣な表情になっていた。
妻をその腕に抱きながらも、空間を観察する異教の司祭も、ガインの方を見た。
と、その時、アリスとガインの間に、両断されたミラーの死体が流れてきた。
アリスが顔をくしゃくしゃにしながら、あぐらをかく。
「これもなぁ……どうするコレェ?」
ガインとデシネの視線が、ミラーの死体に注がれた。
そしてデシネが、アリスとガインの傍らまで来る。




