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下らない
女の体を動かしているのは、天使の一人。
超常の力を持ち、ゾミやプレより上位に位置する存在である。
今はこの女の体に憑依し、ガインと激突しているが、本来は実体を持っていない、魂だけの天使で、性質的には黒球と似たものがあるといえる。
(何だ、このゴブリンは)
天使は、眼前に迫るガインに対し、危機感が募っていた。
(私が恐れる程の存在ではない。 そのはずなのに……)
憑依した女の体が、言うことを聞かない。
ガインを決定的にあしらえない。
(ええい、邪魔をするな)
女は修道女。
敬虔で、だからこそ憑依対象として選んだ。
なのに、こんな局面で、天使の意に反したのだ。
(しゃらくさい)
苛立つ天使の魂は、女の記憶を覗き見る。
すると、この女が、神殿の式典でガインを遠巻きに見たことがあったのが分かった。
(聖騎士と戦うのは抵抗があるというわけですか。 下らない)
自分は天使で、ガインは魔物。
天使にとっては、圧倒的な地位の差があるのだが、女の認識ではそうではないらしい。
むしろ武勇伝を伝え聞く聖騎士ガインを敬っていることが分かってしまった。




