デシネの奸計
だが、やはり弾かれてしまう。
歯ぎしりするアリスたち。
その表情を見回す女は涼しい顔。
「あら? ゾミがいませんね」
「私たちが撃退しました」
デシネが一歩前に出た。
ゾミを倒してなどいないが、あえて倒したと、しかも、まるで全員で攻撃して倒したかの様に言ったデシネ。
アリスたちは黙って様子見だ。
すると女の目が据わり、刺す様な視線になった。
「なるほど。 私に向かって来た様に、ですか。 それでプレもゾミも退けるとは、予想外でしたね。 あの子たちでは無理、でしたか。 最初から私が戦うべきでしたか」
女の言葉に、デシネは内心ほくそ笑む。
今の発言には、この女の情報が盛り込まれているからだ。
(この女は、私たちの戦闘を見ていない。 だから私のブラフに引っかかって、今ある状況を誤認した。 そして、ゾミたちよりも強い。 だが……)
デシネも涼しい顔になる。
更にブラフを重ねて、この女を騙すつもりでいる。
その先にある狙いにたどり着く為に。
「私たちには力があります。 この世界を狂わせる力が」
「貴様……!」
女の顔が、険しくなった。
その顔を見て、デシネは嘲笑う。
アリスも、吸血鬼たちも、何が何だか分からぬまま。
しかし、誰もが同じ様なことを思って黙り込む。
(よく分からんけど、このオッサンたぶん策士だわ)
(よく分からないが、この男に任せてみるのがよさそうだ)
ジャン・ジャックやシャノンは様子見。
穴倉は戦闘を見越して構えている。
ガインも黙っている。
誰もがデシネの奸計の邪魔をしない様にする中、クマガイだけが口を開いた。




