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風か
「風か」
そして、無意識のうちに、ニヤリと笑っていた。
クマガイの体毛が、黒球の力の影響で黒く鋭くなり、目にも止まらぬ縦回転をすることで、触れるものを切断する技、クマバズソー。
その突破力を向上させたのは、左右に向かって噴出している風である。
回転しながらクマガイが言う。
「そうだよ。 左右均一に出る風は、クマバズソーの軸ブレを防ぐんだよ」
やや聞き取り辛いが、クマガイの声が確かに聞こえた。
その声のトーンが得意気に聞こえて、穴倉は苛立ちから歯噛みする。
「ちっ……!」
刃となったクマガイの全身は回転している。
硬質化した触手と接触したら、本来ならば弾かれ、寸断時にブレるはずだ。
だが、風に挟まれたクマバズソーは、一矢乱れぬ縦回転が可能になり、触手の盾を真っ直ぐに素早く切断出来たのだ。
だが、突破されたからといって、それで即詰むわけではないのが、戦闘生物・穴倉である。
穴倉の狙いは、防御を固めながら爆発によって定期的に距離を取り、その間に〝あれ〟をチャージすることだった。
その目的は達成されていたのである。




