隣我(リンガ)
高木が、この少年に寄生するのは何度目だろうか。
この世界では珍しくない黒髪に黒眼のこの少年は、思春期ほどの年齢だろう。
母親は週に一度しか来ないし、病院はこの少年に魔法で栄養を与える以外は無関心なので、数日行方不明でも騒がれない。
しかも、寄生には大きなメリットがあった。
高木が寄生した体が所持している魔法が、寄生した体のMPで使えること。
使った魔法は高木のステータスにも刻まれ、高木自身や他の体でも使える様になること。
寄生が、接続という稀少魔法扱いで、ただの魔法でも常に合体魔法と判定されること。
接続は、精神と魔力の波長を無理矢理に同調させ、波長を合わせた相手との合体魔法を可能にする魔法である。
相当高位の存在でないと使えないとされる、幻の魔法だ。
それを高木は、永続的に使用している状態にある。
例えば、少年の火球魔法と高木の火球魔法を合わせても、普通は相殺されるだけだが、高木の場合、少年と高木の二人で作った、接続火球魔法ということになり、その威力は数倍に膨れ上がるのだ。
つまり高木は、少年が使える魔法なら、どれでも効果を数倍に増幅出来るということである。
故に、飛空魔法も、尋常ならざる速度のものとなる。
ガムドムルァの森へは、空が暗くなる頃には着いてしまうだろう。




