穴倉は見た
クマガイの怒号を受けて、穴倉が笑う。
その笑みは無意識のもので、穴倉には笑っている自覚はない。
「何笑ってんだよ! お前!」
クマガイは、穴倉の笑みには挑発の意味が含まれているとかんじたが、そんなつもりのない穴倉は、ただ目を丸くして、クマガイを見る。
(俺は笑っていたのか。 ……そうか)
穴倉はややぼんやりとして、迫るクマガイを特別警戒する様子もなく、構えもせずに見続ける。
トップスピードと思われたクマガイだったが、回転力を増し、触手を素早く切り捨てながら穴倉に迫る。
ここでようやく穴倉の眼に光がともる。
(そうか! そうなったか!)
声には出さなかったが、強い感情に突き動かされる穴倉は、クマガイ迎撃の為の一撃をチャージし始めた。
それは、クマガイのバズソーが明らかに化けたからだ。
放っておけば、穴倉に届くだろう。
そう信じたクマガイと、そう確信した穴倉が、同時に叫ぶ。
「さっきまでは! ただ回転してるだけだった! けど!」
クマガイは縦に回転しながら、横に向かって両腕を伸ばしている。
そして、その掌から風を噴出しているのを穴倉は見た。




