黒い気と贖罪
ほの暗い感情がゾミの体をめぐり、黒い気となって体外に放出された。
その量は凄まじく、まさに黒い感情に支配されている状態に見える。
だがゾミは自我を保ってもいる。
それはデシネも、黒球も、そしてゾミ本人もが思いもしなかったことであった。
地上から見ると距離が遠くて、何が起きているのか分かりにくい。
が、とてつもない量の黒い気が放出されているとなると、誰もがある可能性を心配した。
「あれは……!」
ジャン・ジャックは戦慄し、言葉が続かない。
黒い気が、黒球に関係のあるものだと、簡単に察しがついた。
黒球を倒せていないのかと思い、再度の命懸けを覚悟するジャン・ジャックは、上空を見上げているアリスを見る。
ジャン・ジャックの目には、アリスは気高い女神に見える。
アリスが戦う限り、共に戦うつもりでいるジャン・ジャック。
(彼女はやるはずだ。 その時は全力を尽くして協力する)
ジャン・ジャックは、何度だって自分の生命を燃やすだろう。
今のジャン・ジャックは、献身による絶命を苦痛だとは思わない。
復活を生まれ変わりの様に考えるジャン・ジャックにとって、再度の絶命と復活は、自分がこれまでなしてきた殺人の贖罪の様に思えている。
ジャン・ジャックは、騎士殺しに罪の意識など持ってはいない。
だが、ヴァリッジとエディを欺き隠しているという意識がある。
それが、絶命と復活による贖罪を重ねた数だけ許される気がした。
実際に許されるかどうかは分からない。
ただ、ジャン・ジャックは前に進める気がしたのだ。
アリスは、そんなジャン・ジャックの視線に気付きながら、ただゾミの黒い気を眺め見ている。
(やたら熱い視線をかんじるわ……。 まぁ、それはさておき、アレ、あの黒い球が復活しそうなカンジあるわ。 さっさと潰した方がよさそうだわ……)




