1999/2233
人としての思考
銀の翼の血をすすり、噛み砕いて飲み込んだ穴倉。
その身に銀の翼が生えて、全身が同じ銀色に変化してゆく。
鈍い光沢が全身くまなくあらわれて、まるで銀で出来た像の様。
だが穴倉は、色は変われど有機的なまま。
全身が脈動し、生物特有の収縮を繰り返す。
それは見る者を戦慄させる禍々しさがあり、誰もが息を飲むと言っても過言ではない。
だが、穴倉は、自分がいくら変わっても、心のままに生きていれば何も変わらない、との思いを強くし始めている。
「強くなる為には何だってする」
そう言いながら見上げる先にはゾミがいる。
穴倉が翼を広げると、潮流に乗った船の様に、するすると飛び上がってゆく。
「いや、まだ何もしていないな」
穴倉は捕食を繰り返してきた。
それが穴倉の正当な進化の過程であり、生物として自然な姿である。
だが穴倉は、進化ではなく鍛練をせねばと思う。
それは何か特別な気付きがあっただとか、悟りをひらいたとかではない。
人としての記憶を植え付けられた穴倉がたどり着いた、当たり前の思考であった。




