だから俺は、どこまでも変わっていくよ
穴倉は、鮮血したたる翼から目が離せなくなった。
これまで穴倉は、様々な敵を食って強くなってきた。
戦闘生物として生まれた以上、それが当たり前だと思っていて、敵を食うことに葛藤はなかった。
今だってそうだ。
誰かを食らうことを当たり前のことだと思う。
他者から見た場合、それが異常なことだというのも理解しているが、アリスの言動によって、もう一切の抵抗がない。
「ふふふ」
笑う穴倉は思い出す。
穴倉がプレの腕を食った時のことを、だ。
(アリスは、天使を食った俺を否定しなかった)
その後アリスは、身勝手とも思える程、気軽に穴倉に命をかけさせた。
そして穴倉はすんなり従い、自爆によって敵を殲滅したのだ。
甦ることが出来る保証があるとはいえ、死と向き合うのは本来ならば苦痛が伴う。
だが、そんなことが些事にかんじる程、穴倉はアリスからの依頼に高揚した。
「あいつと俺の関係は何も変わらない、俺がどうなろうとも」
造られた記憶とはいえ、穴倉が縋ることが出来るのは、いつもアリスの存在。
だからこそ、何者にでも変わって行ける。
そして、どこまでも強くなりたいと、穴倉は思った。
今の穴倉は、戦闘生物としての自分を空虚に見つめるのではなく、受け入れて、誇りすら持ち始めている。
「だから俺は、どこまでも変わっていくよ」
尻尾を伸ばし、銀の翼に巻きつける穴倉。
そして持ち上げると、頭の口が大きく割れて、そこに翼を放り込んだ。




