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うん、任せるけど
だが、クマガイは呆然としていて、獣の前傾姿勢には程遠い。
闇は漂おうとも、戦いに向かう雰囲気は高まらない。
穴倉としては少し拍子抜けだが、気持ちが分からぬわけではない。
(戦えないぐらいにショックか。 なら今)
身構えたままの穴倉は、クマガイに突撃せんと足を踏み出そうとした。
「!」
だが実際には踏みとどまる。
穴倉としては不本意ではあるが、この踏みとどまりには、どこかで納得もしていた。
溜め息が出たが、胸の内は晴れやかだ。
「うん、任せるけど」
「おうよ」
穴倉とクマガイを結ぶ直線上にアリスが割って入り、どっかと腰を下ろした。
あぐらをかいて、腕を組み、アゴを上げて、クマガイを見下ろす。
するとクマガイも腰を下ろして三角座り。
二人の様子を眺める穴倉は、「なるほど、やっぱり俺たちは、アリスの為に造られたんだな」などとぼんやり考えながら、肩の力を抜いた。




