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一回捨ててしまった

 そもそも穴倉は、最初から自分が人間ではないと知っていた。

 ごく当初こそ、誰にも言えぬと葛藤もしたが、しかし、ゴブリンを捕食してみると、何も難しく考える必要はないと思わされた。

 捕食がとてもしっくり来てしまったし、自分が魔物だと知っているというのは、意外に気が楽であった。


(俺もお前らも、何も変わらないはずなんだけど)


 穴倉は一瞬自分の足元を見た。

 異形の足が目に映る。

 そこから視線を上げると、人と変わらぬ見た目のアリスが見えた。

 すぐそばに、獣のクマガイ。

 三者三様、姿かたちは全く違う。

 だが同時に造られた、ある種の兄弟の様な意識が穴倉にはある。

 全ての記憶が偽りのものだと知る穴倉は、ある意味自由で、そして孤独でもある。

 お陰でアリスとの初対面時には既に達観と空虚な気持ちで、アリスと冷静に会話出来た。


(あの時、俺が)


 アリスのもとから去ったのは、魔物である自分をある程度受け入れたからでもあるし、そして同時に、自分を受け入れ難いという側面もあってのこと。

 (たもと)(わか)つこととなったのは、記憶の焼き付けが失敗し、穴倉が自身の正体を知ったが故の結果。


(お前を一回捨ててしまった)


 自由に生きて行こうと、一度はアリスを振り切った穴倉であった。

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