俺は俺、お前はお前だよ
「お前は何なんだよ! そこにいるだけなのに!」
今のクマガイには、正しい記憶がない。
黒球から情報を得たクマガイは、自分がこの世界に生み出された、造られた存在だと知った。
だが、不完全な黒球の欠片が心にへばりついて、一体化しつつある今、記憶が錯綜し、知ったはずのことを忘れていて、自分とアリスたちに対する認識が曲がってしまっていた。
黒球の欠片はクマガイを戦わせようとし、クマガイの情緒を不安定化する。
それには、穴倉への不満を噴出させるのがいいと、黒球の欠片は判断した。
クマガイの記憶に触れてみると、よくも悪くも関係性が深いアリスとの絡みよりも、関係性が浅い穴倉との方が、戦闘意欲を煽りやすいと判断したのである。
そして、その思惑はハマったと言えた。
クマガイはいびつな記憶をたどり、自分と立場の違う穴倉に嫉妬し、激昂する。
「俺とお前の何が違うんだよ!」
つり上がるクマガイの目。
その怒りの形相を見ても、穴倉は、特に動じるところはない。
「俺は俺、お前はお前だよ」
至極当然のことを言ってのける穴倉には、何の意図もない。
俺とお前の何が違う、と訊かれ、個体として違う、と当たり前に答えただけである。




