お前以外が言うならだけど
クマガイの言葉に目を丸くした穴倉は、しばらく無言になり、間を取ってから返答した。
「一理あるな」
確かに穴倉も立ち位置を変えがちであった。
しかし、とはいえクマガイに何故そんなことを言われる筋合いがあるのだ?と穴倉は思った。
穴倉とクマガイは、今日が初対面。
果たして、お互いがどういった立ち位置なのか、分かるものなのだろうか。
そう思った穴倉は、素直に感想を口にする。
それは、返答の続きである。
「お前以外が言うならだけど」
穴倉は記憶を保持したままでいる。
自分やクマガイは有栖川の生を彩る為に造られ配置された脇役だ、と。
このカラクリを知ってしまっている穴倉にとっては、クマガイがアリスと仲良くなっていることがまずあり得ないこと。
クマガイは本来、敵であり、それが変わることなどなかったはずだからだ。
しかし実際にはクマガイは共闘関係にあった。
アリスとの間に何があったのかは知らないが、先程までは関係性がやたら良好に見えた。
「……!」
鋭い目をしたクマガイが、穴倉を見上げている。
敵対関係にあり、戦えばいいと割り切る穴倉は、爪を伸ばし、軽く構える。




