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クマガイとは別の何か
「……!」
「う、あっ……」
呻くクマガイ。
白目を剥き泡を吹くその姿を見たアリスは、眉をしかめて小さく首を振る。
「う~わ、キィッショ」
本当に嫌そうな顔をしたアリス。
ほぼ同時に、クマガイの顔は無表情に変わり、静かな目でアリスを見た。
「……!」
一瞬前までの泡を吹くクマガイとは似ても似付かぬ無表情のクマガイは、再び爪を出し、半身を乗り出す様にして、やや低く前傾姿勢で構える。
二足で立ち、見た目はぬいぐるみではあるものの、獣じみた雰囲気も醸し出していて、攻撃性が滲み出ているその姿に、アリス、そして穴倉が警戒して睨み、そしてガイン、フォンテスは今にも吼えそうな顔で対峙する。
だが、クマガイ本人の意識は朦朧として、視界がぼやけ、眠気にも似た重い何かが、頭に、まぶたにまとわりついていて、睨み合ったり、攻撃性をアピールする様な状態ではない。
しかしアリスたちの目に映るクマガイは、沈着冷静な反逆者然としていて、本当のクマガイとは別の何かなのだ。




