シャノン、どう思う?
ガインには、クマガイの言葉の意味が分からなかった。
ガインだけではない。
ジャン・ジャックも吸血鬼たちもそうだ。
「何の話だ?」
眉をひそめるイゴールは、シャノンへと視線を投げた。
ほぼ同時に、フォンテス、マシアスもシャノンを見る。
彼ら吸血鬼は、短絡的に戦いへと向かいがちだ。
無論、アリスとクマガイの激突に乱入しようという意識が働いている。
しかし、現状ではそうはならない。
誰を攻撃すべきなのか、誰と戦うべきかが分からないからだ。
「シャノン、どう思う?」
主であるフォンテスが問うた。
フォンテスは、先程まで共闘していたクマガイの造反と不可解な言動を目の当たりにして、動けずにいる。
アリスたちか、クマガイか、どちらかにつくべきなのかが、一切見えないからだ。
フォンテスが動けば、マシアスとイゴールはきっと追随する。
そうなった時に、戦う相手を間違えていた、などという失態は犯したくない。
だからフォンテスは、今は軽率には動けないと考えている。
そして、動けないのはフォンテスだけではない。
マシアスも、イゴールも、どう判断すべきか分からず、困惑している。
お陰で、シャノンが信頼に足るかどうか疑問であっても、一族の中で一際聡明なシャノンに判断を仰ごうとしたのだ。
それを察したシャノンは苦笑しつつ、首を振る。
「迂闊に攻撃しちゃダメ……ですね」
シャノンの言葉は、フォンテスへの返答。
フォンテスは「そうか」と呟き、マシアス、イゴールと視線を交わす。
それは、動くな、という命令が含まれた視線で、フォンテスならではの部下への気遣いが表れた行動であった。
裏切りかけたシャノンの言葉には、マシアスも、イゴールも反発するかも知れないと、フォンテスは思った。
ならば、自分が間に入ればどうだ。
判断はシャノンがしても、最終決定はフォンテスが下す。
この形ならば、マシアスも、イゴールも、フォンテスを介してシャノンに追随出来る。
これには、フォンテスの問いへの返答を口にしたシャノンも、内心、安堵の気持ちを抱いた。
部下の意見に耳を傾けるフォンテスに、一時は不甲斐なささえかんじたシャノンだったが、混戦の場合には、フォンテスの振る舞いこそが有効だと思わされた。
シャノンの中にあるわだかまりは、溶け続けている。




