俺は知っちゃったんだよ
その怒りの理由がクマガイには分からない。
アリスの思考を読もうと思うクマガイだが、目をつり上げ、牙をむき出しにして拳を振るうアリスを見ると、何も対策を考えられず、困惑する他ない。
(マジで何なの!? ねぇ!?)
理由の分からぬ猛追に恐怖を煽られたクマガイは、アリスに対して、憤りの気持ちを抱き始め、そして遂には叫んだ。
「普通ならさぁ! 俺が黒い球に心を操られてる、みたいに思うもんじゃないの!? 黒い球は敵だけど、クマガイはダチだから倒せねぇわ、みたいに思うもんじゃないの!? ねぇ!?」
クマガイの叫びは、黒球の干渉などないと思われる程に、クマガイらしいものであった。
とはいえ、クマガイの心と黒球の欠片は結合してしまっていて、干渉がないはずはない。
だが、この時、クマガイは、ただシンプルに思いを吐露したつもりであった。
クマガイは、黒球によって、自分たちやこの世界の情報を多数知った。
だからこそ、アリスに戦意をぶつけ、様々なことを問いたい気持ちがあったのだ。
しかしアリスは突如怒り狂い、追って来る。
言い様のない巨大な不満をかんじたクマガイは、追ってくるアリスに罵声を浴びせ、爪撃を繰り出した。
「何がそんなに気に入らないんだよ!?」
「仕掛けてきたのは、てめぇだろうがよぉ!」
「仕掛けた!? 俺が!?」
「穴倉に止められなかったら! お前! 俺を斬っとったやろ! 俺がケガしたらどうするんじゃボケが!」
アリスの怒りの理由は、とてつもなく浅く、自己中心的だ。
クマガイは「ああ、アリスってこういう奴だった」とぼんやり考えながら、しかしアリスに向かって言葉を突き刺す。
「俺は知っちゃったんだよ! 俺たちのことだって、この世界のことだって!」
するとアリスは立ち止まり、無言になった。
一気に広がる距離。
クマガイも立ち止まり、遠間でアリスに向き直る。
穴倉も歩き、アリスの横まで来た。
それを更に遠間から見る、ガインや吸血鬼たち。




