異形のものたち
穴倉とクマガイ。
二人に因縁はない。
それは二人ともが知っている。
記憶のカラクリを知る二人ともが知っている。
まず穴倉は、アリスの仲間の一人として、この世界を闊歩すべく造られた。
本来ならば、アリスが一目置き、頼りにする存在となるはずだった。
気ままなところはあるが、頭脳明晰な兄貴分になるはずだった。
だが、イレギュラーは起こる。
穴倉には、記憶の焼き付けが上手く行かなかった。
お陰で穴倉は、自分が『姿かたちを化け物に変えられた人間・穴倉羊透』ではなく、『人間・穴倉羊透として造られた化け物』だと知っているのだ。
これを知った当初、穴倉は、アリスたちから離れて別行動を取った。
化け物らしく生きようと思ったし、そうあるのが正しいと思ったからだ。
しかしアリスにとって、穴倉羊透は、化け物であっても穴倉羊透だった。
アリスは穴倉が何者なのか知っているが、しかし、それをある意味では全て受け入れ、ある意味では何も受け入れていない。
アリスの仲間として造られた穴倉。
ならばと、仲間として受け入れるのがアリス。
だがアリスは、この生い立ちに納得してはいない。
このままにするつもりはないのだ。
というのも、アリスが知っているのは、穴倉の生い立ちだけではない。
アリス本人も、仲間たちも、この世界に生み出された、異形のものたちでしかない。
これをアリスは知っている。
その上で、何かを為そうとしている。
穴倉はその手助けがしたい。
何かを為してみたい。




