アリスとガインの初遭遇
ちょっとシリアスでごめんなさい。
「何をしている!その娘から離れろ!」
銀の鎧に身を包んだゴブリンが遠くに見える。ガインだ。ガインはそのまま、猛スピードで距離をつめてきた。背中に背負った大剣が抜かれている。
「うぉぉ、何かでっかい剣のでっかいゴブリンきたわ。これは強そうだわ。アレ片手で持つとかカッコイイわ。鑑定…っと。んん!?何か結構強いわ!」
有栖川が鑑定でガインを見た刹那、ガインが突きで有栖川を狙う。ひらりと跳んでかわした有栖川は大剣の上に立ち、下がり眉で口を横に大きく開いた、相手をバカにした様な笑みを見せる。
「華麗極まりないわ。俺の方がカッコイイ感あるわ」
そして有栖川は、火魔法ヘルフレアを放つ。森の中で火を放つなど、正気の沙汰ではない。ガインが防御魔法グレーターシールドで防ぎ、事なきを得る。
険しい表情のガインが口を開く。
「森で火を放つ異常性、しかも謎の黒炎魔法。貴様、ただの死霊使いではないな……!」
ガインの言葉を聞き逃したが、有栖川は気にも留めず、くるりと後方宙返りした。スカートの前と後ろは押さえながら、地面にふわりと降り立つ。
「俺、美少女的な恥じらいも完璧だわ。ノーパンだから絶対に死守するわ。よぅゴブリン・テンプラー。俺様はよ、人畜無害な美少女魔人アリスちゃんだ。何も悪いことしとらんわ。剣を退けゴミ野郎。首ねじ切るぞ」
有栖川はアリスを名乗り、経緯を話す。話が噛み合わない。お陰で、ガインの殺気は一層強くなり、敵意がより剥き出しになっている。
「チッ、わからず屋のクソゴブリンが」
アリスは舌打ちし、口悪く罵りながら両拳を握り、右足を一歩下げ、左半身が前になる体勢となる。と同時に、右手の握り拳を首元近く、胸の辺りまで上げる。左手は拳を握って下げたままだ。ボクシングでいう、デトロイトスタイルの構えである。
「池中、泥島、俺に飛び乗る用意しとけ。こいつ、ステータスは俺より断然下だけど、戦闘用くさいスキルくっそ持ってて面倒臭そうだわ。逃げるが勝ちだわ」
お前らも鑑定で見てみろ、とアリスが言うと、ガインが一瞬目を見開いて驚愕の表情を浮かべ、すぐに目を細めて静かに言い放った。
「鑑定は、ごく一部の選ばれた人間を除き、魔王しか持っていない最上位スキルと聞いた。それを貴様ら全員が持っているということは……!」
ガインは右半身を前にして、大剣の柄を両手で握りしめ、弓を引く様に突きの体勢を取った。突きを得意とするガインに師が授けた最強秘剣、風雷牙の体勢である。先程の突きとはワケが違う。
「魔王の複数出現など、見逃せん!今ここで貴様らを殺す!」
「出た出たオイ勘違い!話せばわかる!」
 




