二つのパーティー事件
ミラーが宿の中に入ると、エオエルがレストランで朝食をとっていた。
朝からオムレツを三つというのは、些か健康によくないのではないだろうかと思う。
アーマンダインでは神殿の影響力は比較的小さい。
それはミラーが神官として凡庸だということとも無関係ではない。
だが、健康指導をしていることもあって、エオエルはミラーの言葉には耳を傾けてくれる。
だから、自分が言わなければならないだろう。
「朝からオムレツ三つは、よくありませんよ。」
「おお、神官様。そうなのですか?」
ニコニコと笑顔を向けるエオエルは、好好爺といった風情だ。
「オムレツ一つにつき、卵が三つ使われていますから。少し控えるべきでしょうね。」
ミラーは、ちらりとカウンターの方を見る。
そこには料理人がいて、希望者にオムレツを焼いてくれるのだ。
エオエルは、そこで三つもオムレツを作ってもらったのだろう。
「そうでしたか。明日から気を付けるとしましょう。」
今日から気を付けるべきだ、とまではミラーは言う気がしなかった。
これからする話の内容で、エオエルの食欲がなくなるだろうと思ったからだ。
「エオエル様。食べながらでよいので、お話を聞いて下さい。」
エオエルは、オムレツを頬張りながら頷く。
「蕀が分裂し、魔法剣士アレックスと魔女クロキが脱退しました。リーダーのギルバーティがンカフで足止めを食らっているそうで、エオエル様に対処を頼みたいそうです。そして昨日、聖騎士ガインがブレブロ冒険者ギルドに所属しました。無名のパーティー立ち上げに参加したと…。」
エオエルが立ち上がり、ぽかんとした顔のまま、数瞬停止した。
目だけを動かし、ミラーを見つめる。
エオエルの口の中にはオムレツ。
口を閉じてほしい、とミラーは思った。
 




