スライムクイーン着陸す
「オォウ。未確認飛行物体が飛来したぜ。」
蕀のリーダー、ギルバーティは、虹色に輝く飛行物体を発見した。
「オォイ!こっち!こっちだぜ!」
そして手を振ると、飛行物体もギルバーティを認識したらしく、虹色のそれは、何かを噴射して加速し、どんどんギルバーティの方へと飛んで来た。
「いらっしゃいませだぜ。」
ギルバーティが両の親指を立てたのと同時に、何かを逆噴射したそれは、空中で一旦停止した。
ギルバーティは噴射された何か…、水でびしょ濡れになる。
飛行物体が球になり、垂直にストンと地面に落ちて跳ねた。
跳ねた瞬間には形が崩れ、地面にへばりつく。
「危なく人に当たるところだったわ。大丈夫?お兄さん。…大丈夫じゃないわね。」
「お兄さんは、大丈夫だぜ。」
ギルバーティは、リーゼントに決めた髪を掌で整え、服の襟を正した。
純白の衣装は金糸で刺繍が施されている。胸元が大きく開いていて、袖には鬱陶しいフリンジがビラビラとついている。
ズボンの裾は広がり、野歩きによって汚れていて、服に合わせたであろう純白のブーツもやはり、野歩きによって汚れていた。
飛来したレインボースライム、池中瑠璃は、驚愕の声をあげた。
「え!?どう見てもエ●ヴィス・プレスリーなんだけど!!すっごく怪しいわ!!誰!?」
そして警戒態勢に入った。
無理もない反応だった。
それほどまでにギルバーティは怪しかった。
「お前こそ誰だぜ?COOLでシャレオツな色使いには惚れ惚れするぜ。」
「私はルリ。スライムよ。アリス以外でシャレオツって言う人、初めて見たわ。で、あんたは?」
「俺はギルバーティ。スライムだぜ。」
「嘘!?スライムなの!?」
「違ったぜ。人だったぜ。つい連られて、スライムって言ってしまったぜ。種族を詐称してしまったぜ。でも、わざとじゃないぜ。」
「…まずいわ。こんなに怪しい人、見たことない。」
「人の話は聞くもんだぜ?見ての通り、怪しいもんじゃないぜ。」
「見るからに怪しいわよ!」
ルリは、ギルバーティを一層警戒する。
ギルバーティは、濃い顔を歪めて、暑苦しい笑顔を作った。
嫌悪感でたじろぐルリ。
ギルバーティは、素早く右目をしばたかせた。
こんなにも連続でウインクする人間がかつていただろうか、片目だけドライアイなのではないだろうか、とルリはまとまらない考えをいくつも思い浮かべたが、当然の様にまとまらず、考えるのをやめた。
「怪しいもんじゃないぜ?アーハン?」
ギルバーティの白い歯が、キラリと輝いた。
…うざったい。
ルリは無意識のうちに、戦闘態勢を取っていた。




