スライムクイーン
話に聞く敵は、地中から出て来た、透明で羊の角を生やした、頭が割れる化物であった。
これはアリスから聞いた、穴倉だと思われる。
友人と戦うことになるのは、どうかという思いが私としてはあるのだ。
といっても、戦いたくないとか、殺したくないという気持ちはない。
それが私を戸惑わせている要因なのだ。
里を襲撃しスライムを喰ったということは、穴倉は私も同じ目に遭わせようとする可能性が高いわけで、そうなると穴倉は敵という気持ちしか芽生えず、アリスのあの時の気持ちがわからなくもない。
アリスの場合は、私たちを守りたいが為の、自分と私たちへの叱咤を込めた〝穴倉は敵〟という言葉だったのだろうと思う。
必死に何かを振り切る様な、苦悩とも取れる感情が見えたあの件は、思い返す度に、アリスを抱きしめたくもなるし、私とは感情の発露が全然違うな、と少し寂しい気持ちにもなる。
友人を殺すことに、いささかの躊躇もないであろう自分に対して、果たしてどうかという思いがあるのだ。
であるからして、敵が穴倉ではなく、別の個体であってくれ、と願わなくもないワケなのだ。
穴倉であろうと、違う個体であろうと、私は躊躇もしないし、情けをかけて生かすつもりもない。
だが、いざ穴倉だった場合、殺したとして、私は、アリスや泥島にどう顔向け出来るものかと、そればかりを考えていて、これが違う個体ならば、どうということはない、だから別の個体であってくれ、と、ただそれだけの感情しかない私は、既に魔物に相応しい冷酷さではないだろうか、と思ってしまう。




