セオドールとダーハム
後ろから、土に潜った何かが来る。
土は魔素を遮断する。
だから、地中にいる魔物を感知することは出来ない。
しかし、地中から出て来る魔物の大半であるワームならば、移動時に、土をボコボコと盛り上げる習性を持つ。だからして、出て来る前にわかる。
だから、ワームではない。
しかし、何かがいる。
何かがいるが、感知は出来ない。
セオドールは歩を止め、ダーハムに合図した。
ダーハムはひょいとセオドールにおぶさる。
そしてセオドールが、無音で草むらの中に移動した。
ポコ。
透明な魔物が、地中から出て来て、キョロキョロと辺りを見渡した。
「セオドール、あれはー?」
「うるせー黙れ。多分、スライムの変異種だ。物凄くヤバいぞ。冷や汗が止まらねー。」
「え、強いのかよー?」
「うるせー黙れ。気付かれたら殺されるぞ。あいつはヤベー。」
「…!」
魔物はそのまま地上に出ると、のろのろと、二足歩行で獣道を進んで行く。
しばらくすると、気配が消えた。
距離が開き過ぎたのだ。
「…ヤベーな。引き返すぞ。スライム侮ったら死ぬからな。」
「えー?ここまで来て、そりゃないぜー。金になるかもしれんのだろー?」
「…途中にあった転移門、あれに絡み付いてた魔力の残滓と同じ気配だった。魔物であれだけの魔法を使うとなると、俺ら五人揃っても危ねえかもしれねえぞ?それでも行くか?」
「金になるかもしれねーんだろ?なら行こうぜー。」
「…知らねえからな、どーなっても。その代わり、こっからは絶対俺の指示に従えよ?絶対だぞ?」
「わかったー。」
二人は、スライムの獣道を慎重に進んだ。




