レインボースライムは眠りたい
何ということかしら。
弱いとは思っていたけど、これじゃあ、私たちは本当に有栖川におんぶにだっこの、ただの穀潰しじゃないの。
情けないことね。
有栖川はこんな私たちを、口悪く悪態突いたり、見下す様な発言を繰り返すけど、本当は優しいってことを私は知ってるのよね。
何だかんだ言いながらも、私たちはこれまで、飢えたことがないわ。それは、私たちが寝ている間に、有栖川が狩りや採集をしてくれているから。
それだけじゃない。有栖川は、スキル上げ、経験値稼ぎの戦闘も、夜中にずっと行ってる。
昼間になると、私たちと一緒に、ウダウダと油を売るけれど、その間も、何らかのスキルを常時発動してLVを上げているのは明らか。
転生してから今まで、ずっとこの森にいる私たちは、昼間、各々で森を散策することも多いわ。だけど、他の魔物に襲われることはないのよね。
それは、私たちが、有栖川の使い魔だと思われているからなのよね。
私なりにスキルを修得して、念話を使える様になって、周りの魔物と話して分かったことだけど、有栖川は、この森を支配しようとしているわ。そして、私たちに手を出した者を許さない、さらには、俺の家に手を出す者を許さない、という布告もしているのよ。
私は意気に感じたわ。有栖川の家っていうのは、私が用意したものだからよ。
スライムの、今の私の虚弱なステータスじゃ、材木の切り出しや運搬なんて到底出来ないわ。だから、大きな木に開いている穴を見つけて、中に草を敷き詰めただけの、簡素でみすぼらしいもの。有栖川ひとりがあぐらをかけばいっぱいいっぱいぐらいのものよ。他のみんなに見せるのは恥ずかしいけど、有栖川に見せたら、そう悪い反応は見せないんじゃないかと思ったのよね。そして、有栖川はにいっと笑って、さんきゅな、って一言言ったのよ。私は、胸が熱くなったわ。
それからというもの、魔人になった有栖川は、寝る必要がないはずなのに、しばしば私が用意した家で寝る様になったわ。
私には言わない。でも、私が用意した家を大切にしてくれていることを念話で知ってしまった私は、有栖川を前以上に意識する様になってしまった。ずっと首に巻きついているのが、意識にさらに拍車をかけてしまったわ。
私は、前世から有栖川に淡い恋心を抱いていたけど、これで、有栖川に対する気持ちがとても、とても大きくなってしまった。
だから、役に立ちたい。
足手まといのままではいたくない。
もっと、強くなりたい。
そう思うのよ。
今は、ウサギ程度にも勝てないけれど。
私はまだ、みんなの前では素直にはなれない。けれど、ふたりの時は出来るだけ素直になりたいと思うわ。私も有栖川も大したことは言わないけれど、今みたいに巻きつくんじゃなく、お互いの気持ちをもって触れて、触れられていたい。今でさえ、心が伝わる、心が伝わってくる様な気持ちになるから。
願わくば、あの家で、有栖川に抱きしめられながら眠ってみたいわ。こんなこと、絶対に言えないけどね。
あぁ、私は本当に、有栖川を好きになってしまったんだなぁ、なんて思うのよ。




