話は聞いてもらえる様だ
私は耳を疑った。
何という言葉遣いだろう。
ロリコン!?私のことか!?
キッショ!?私は気色悪いのか!?
この少女以外に言われれば、無礼を咎めるところだが、このメイド少女に言われると、むしろ申し訳なさが先に来る。そして、この少女が眉をひそめ、顔を歪めてなお美しさをいささかも損なわない表情をし、これを見れたこと、さらには彼女の眼中に入り、罵倒されたことへの多幸感と高揚感で、嬉しい気持ちになる。
こうも浮わついていては、自力で彼女の誤解を解く自信がなかったが、傍らにいる影ぼうしが助け船を出してくれた。
「失礼でござるよ。初老のおじさんに向かって、ロリコンとか、じじいとか。…ややっ、この方は、この街の冒険者ギルドのギルド長、タシリモさんでござる。」
「まじかよ、サーセン。じじ…タシリモおじさま、ゴードン薬店へようこそ☆いっぱい買って行ってね!」
急に愛想がよくなり笑顔になった少女を見ると、薬店で色々買いたい気持ちが溢れて止まらなくなるが、何とか振り切った私は、店内でぶどう水を三瓶買い、外に出ると、メイド少女と影ぼうしに一本ずつ渡した。残りの一本は私のものだ。
少女と影ぼうしは、いつの間にかぶどう水の瓶の栓を開けていて、既にごきゅごきゅと飲んでいる。
「君たちと交渉したいことがある。」
私の言葉に彼女たちは、全く同じタイミングで、サムズアップの親指を立てた。少女はそのまま掌で、どうぞ、と促してくる。
どうやら、話は問題なく聞いてもらえる様だ。




