妖
全員が息を飲んだ。妖霊は結成して二十年以上経つ有名なパーティーだが、リーダーである妖賢者の顔を見たことがある者はいない。妖賢者は、仮面を着けている正体不明の冒険者だからだ。そのミステリアスさにファンも多い。
女守護騎士クルーサリティスが前衛と回復、守護騎士ラスが前衛と補助を務め、後衛の、仮面の妖賢者が、変幻自在の魔法で攻撃、回復、補助を担う、特殊な型を持つパーティーである妖霊は、幾多のダンジョンを踏破した、伝説のパーティーだ。
その伝説の妖賢者の正体が不意にわかるというのは、この場にいる者たちにとって、驚き以外の何者でもなかったのだ。
「な、何と!あなたがかの有名な妖賢者殿でしたか!」
エオエルがまたも立ち上がる。
「通常、守護騎士は一人いれば充分とされますな!しかし、その守護騎士が二人いるという特殊な編成は、登場当時、旋風を巻き起こしたものでした!
守護騎士二人による長期戦と、妖賢者殿の魔法による一撃必殺を主眼に置いた、二段構えの戦法!長期戦から短期決戦へ、短期戦から長期戦へ、迅速に変化するパーティー編成を生み出したのは革命でした!
クルーサリティス嬢は、先代の守護騎士バディ・リー公が育て上げた新鋭!ラス殿も十代で守護騎士になり、二十年もの間、妖霊の前衛として名を馳せている歴戦の勇者!そして、妖賢者殿こそ稀代の魔導士!風、土、火、水の融合魔法、四大魔素爆裂波を使用出来る唯一の使い手ですからな!魔王何するものぞ!ですな、ははは!いや私は妖霊と妖賢者殿の大ファンでしてな!」
先程までの元気のなさはどうした、とタシリモは少し呆れてしまった。




