今の俺だけが俺だ
ポコ。
地面から顔を出してみると、巨大な蛇竜がズタズタになって転がっていた。
八つ首のうち七つの首は、根本から斬り落とされていたり、頭部が潰されていたりしたが、一つだけは辛うじて胴?と繋がって、浅い息をしていた。
「凄い奴は、いる。しかも、一人じゃない。」
俺は、誰に言うでもなく呟く。
傷には、残光が見える。性質が異なる光が四つ。
太陽、雷、神聖、そして謎の光。
「四人いた。」
俺が四人いたとして、こんなに巨大な蛇をここまでボロボロにすることが出来るだろうか。
「いや、出来ない。」
そう、出来ないだろう。
俺は、弱くはない。
だけど、強いとも思えない。
何を、どうすればいいのか、わからない。
何をどうすれば、強くなれるのか、わからない。
食っても食っても、足りない。
食っても食っても、望む強さには、届かない。
「もっと食いたい。もっと強くなりたい。」
俺の頭が割れて、中から触手が出て来る。蛇竜に巻きつき、微細な棘を出して刺す。そして血を吸う。
ゴクンゴクンゴクンゴクン。
「ダメなんだ、こんなんじゃ。」
…蛇竜の血を吸い、カラカラになった吸いがらを食ってみたけど、やっぱり、大した強さは得られない。
少ししか食ってないからか?でも、こんな大きさのモンスター、食い切れない。
「そうだ、俺はモンスターを食うことにこだわり過ぎた。次は、人を食ってみよう。あの四人、食いたいな。」
きっと何かを得られる。もっと何かが変わる。
『後戻りは考えないの?』
頭の中に声が響く。
「俺は人間じゃない。今の俺だけが俺だ。」
『…。』
返事は、終ぞや返って来なかった。




