『神を越えた力』
『…』
『これがシオン様のご先祖様のお話です。
諸説色々とありますが我々に伝わる真実です。』
『え~っ、じゃあ僕はご先祖様のお墓に
恋愛成就を祈っていたのかぁ! 恥ずかし~い!』
『…ぷっ、あははははっ』
綾希子は思わず吹き出した! 今までの緊張した
空気が一気に消し飛んでしまった。
『シオン様、あれは長守様のお墓ではありません。
平内堂は昭和20年に戦火で焼失しているんです。
それを先生(武光)と私の祖父の協力のもと、
浅草観光グループが先頭に立ち
昭和53年に再建された物なんです。』
『そうなんだ!ホッとしたわ(笑)
えっ、じゃお墓参りに行かなきゃね!』
『シオン様はお墓参りに行ってますよ。』
『えっ? いつ?…あ~っ、あそこだぁ!』
綾希子は笑顔で頷き答える。
『そうです。文京区の¨海山寺¨です。』
『な~るほどね! 僕はテッキリ…ゲッ!』
(あれはお爺ちゃんのお父さんの墓と思ってたから
お爺ちゃんの愚痴ばっか言ってたんだよなぁ…)
シオンはふと考えた。納得出来ない顔で
綾希子を見つめ問いかけた。
『ご先祖様の事は良く分かったんだけと
なんで平内さんは焼死体で見つかったんだろ?
¨青眼の力¨を持っていた平内さんだったら
焼き殺されるなんて考え難いし…』
すると綾希子は再び真剣な顔に戻り語り始めた。
『そこに私達の力¨心眼¨の秘密、そして
青眼の悲しい運命が隠されているんです。』
シオンは再び姿勢を正し綾希子を見つめ頷く。
綾希子もそれに頷き語り始める。
『久米平内様と小春様の間に誕生したのは
娘一人とされていますが、実は息子もいたのです。
それは平内様の師匠¨鈴木正三¨の娘、古都との間に
出来たご子息、名を¨兵藤慈恩¨と言います。
そして慈恩様こそが神を越えた力¨蒼眼¨の持ち主
として初めて現世に現れたのです。』
『えっ? ¨蒼眼¨って…
僕の眼はご先祖様の青眼だったんでしょ?…
蒼眼って一体…』
綾希子は首を横に振り、シオンに答える。
『貴方様は慈恩様の心眼を初めて伝承された
¨蒼眼の瞳¨の正統伝承者なんです。』
シオンは暫く言葉を失った。
天井を見上げると、再び過去に聞いた事が
あるような、不思議な感覚に包まれていた…