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『赤坂の青鬼、久米平内』

時は江戸時代前期…

肥後国 熊本にて一人の男児が生まれる。


1616年2月20日

出生名 『兵藤長守(ひょうどうながもり)


武家に生まれた長守は五歳の頃より

剣術の才の頭角を現し成人の相手にも対等に

戦える業を持ち得ていた。


十五歳では熊本に敵はなく、自ら江戸へ旅立つ。


道中、三河国 挙母藩(現在の愛知県豊田市挙母町)

にて人生の師に出会う。


名は『鈴木正三(すずきしょうさん)


三河国 加茂郡 足助庄(現在の愛知県豊田市足助町)

にて父の代から徳川家康に従い、関ヶ原の戦いでは

本田正信隊に参加し、徳川秀忠を護衛した。

その後二回、大坂の陣でも武功を挙げ二百万石の

旗本となった男である。


長守は、この男に仁王、不動明王の厳しく激しい

精神を学び『仁王不動禅』に目覚める。

そこで開眼し『青い眼』を持つ。

青い眼とは、回りの動きが止まって見える程に

感じる心の眼、異形の力である。

正三は、これを『青鬼の力』と彼に答え

『鬼の青眼(せいがん)』と命名する。


その後、正三の徳川家への紹介状を持ち、向かうは


江戸 赤坂 (現在の東京都港区赤坂)


そこに剣術の道場を開講するが、余所者の武芸。

入門者もなく、貧困の日々を送る。

ある時、江戸市中を異装で闊歩する五人組を

見かける。その者達とは、


水野成行(みずのなりゆき)と、それに使える

四天王と呼ばれる五人組であった。

水野成行(別名、十郎左衛門)は旗本の出であり

地位と名誉と金を持つ者であった。

で、ありながら市中を荒らし回る姿を見た

長守はこの時決意する。


『このような者達が他にも多々存在する。

その様な者達を誰が正すのか。

武の者がこれに組し行うのであれば残るは悪鬼、

この青鬼しか他にあるまい。』


と、千人斬りの願を越し、青眼を他の者に

気取られぬ様に夜毎、辻斬りに出たのだった。


ある日、江戸で世話になっていた町人の

塚本伊太郎(つかもといたろう)(別名、幡随院長兵衛)と、その連れの

小春という町芸子を水野成行達が襲いかかった。

理由は水野成行が小春を誘うが、男嫌いの小春が

これを拒んだからだった。

そこへ居合わせた長守が伊太郎と小春を誰一人

傷付ける事なく成行から守ったのだ。


その一件と伊太郎の強い勧めもあって

長守は小春と祝言をあげる。

この時、長守は国を捨てた男であったので

妻の姓をとり改名する。その名を


久米平内(くめのへいない)』と言う。


平内は小春との間に娘が出来ると

今までの辻斬りを後悔し刀を捨て出家する。

そして、江戸に来ていたかつての恩師

鈴木正三の曹洞宗に入門し、座禅を納めた。


その後、浅草寺の境内、仁王門外に

自らの『仁王座像』を設置し、罪業消滅を願い

通行人に踏みつけさせた。

この『踏みつけ』が後に『文付け』と訳され

縁結びの信仰の対象となった。


出家し刀を捨てた平内だったが正三の教えは

厳しく激しい精神であった事もあり

その教えを学んだ平内は『無手の術』を考案。

体一つで戦場を生き残る業を極めた。


ある時、水野成行は以前から気に入らなかった

塚本伊太郎を罠にはめ殺害する。

それを知った平内は成行のもとへ向かい

これを拳一つで殺害してしまう。

この時、水野成行の死体の腹には

丁度、拳の大きさの穴がポッカリと開いていた。


鈴木正三は徳川家からの信望も厚かった事もあり

その門下の平内は温情を持って処罰無しとなる。


その後は平穏に過ごし信仰を続けた筈の

辻斬り人、赤坂の青鬼、久米平内は

黒焦げた死体で発見され…


1683年7月29日

享年68歳(満67歳)にて生涯を閉じた。



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