『綾希子の昔話』
『ん、んん…』
『シオン様。お目覚めになりましたか?』
シオンは目を擦りながら体をグ~ッと伸ばすと
笑顔で綾希子の顔を笑顔で見つめ
『ん!綾希子ちゃん、おはょ!』
何事も無かったような満面の笑顔で綾希子を
見つめる。が、少し悲しげな顔を見せ呟く様な
遠慮する様な感じで綾希子に話かける。
『僕って…バカでしょ?
だから突然起きた色んな事や綾希子ちゃんが
私をシオン様って呼んでくれたり…
夢で巧ちゃんと話したり…分からないょ…』
シオンは涙を浮かべ布団を握りしめていた。
綾希子は頷きながら語り始める。
『シオン様、私の家柄は昔から兵藤家の
お目付け役として兵藤家を支えてきました。
シオン様は歴史は苦手でしたよね?』
綾希子が優しく微笑みながら問いかけると、
シオンはグスッと泣きながら頷く。
『では、分かりやすく昔話をしますので
聞いて下さい。これは私達のご先祖様のお話です。
ここから始めないと理解できません。
我慢して聞いて下さいますか?』
綾希子はまた、ニコリと笑顔で問いかけると
横になっていたシオンはベッドの上で
かしこまった子供の様に正座をして頷くと
それに答える様に綾希子も頷き語り始める。
『シオン様は浅草寺の境内脇にある
久米平内堂はご存知ですか?』
シオンは少し首をかしげると
『あっ!縁結びの神様でしょ?知ってる!
何度通った事か…(泣) ん?違った?』
『それです(笑)。それが私達に深く
関わっているんですよ。』
『え~っ、縁結びが? 私達に?』
『ふふっ、縁結びじゃないですょ~。
久米平内と言う人物がです。』
綾希子が真剣な顔になると、シオンも少し
姿勢を正し真面目な顔で綾希子を見つめ直す。
『彼は肥後国 熊本 (熊本県 熊本市)にて
生まれました。出生名を¨兵藤長守¨と言います。』
『!?…』
綾希子はシオンの表情を見て頷く。
『そう。彼はあなたのご先祖様です。』
(トクン、トクン、トクン……)
沈黙の中、シオンは自分の心音を感じ、
何かを思い出した様な感覚を感じながら
固まってしまった…