『¨青い瞳¨と¨蒼い瞳¨』
『…で、シオン様を連れて参りました。』
『ん…綾希子ちゃん?』
『確かめてみねばわからぬ…
ただ、ヤツと同じ¨青眼¨であればシオンは…』
『…僕の事を…なんで綾希子ちゃんと
お爺ちゃんが話してるの?…』
武光は一気に息を吸い込むと
窓ガラスが割れんばかりの声で一喝する。
『シオン!!! 起きろ!!!』
『はい~っ!』
シオンはベッドから飛び起き武光に敬礼していた。
と、横に立っている綾希子をチラッと見るが
綾希子はうつ向きシオンと目を合わせなかった。
『シオン、道場へ行くぞ!』
『はいっ!』
武光には一切逆らえないシオンの
厳しい修行の日々が伺える反応であった。
武光についてシオンが、それに続き綾希子も
道場へ向かって行った。
道場へ着くと武光はシオンに向かい
『構えよ!』と、一言。
逆らえないままシオンは
何故、今から組手を…と疑問を抱きつつも
構えをとると、そこには今までに見たこともない
武光の気迫に満ちた姿があった。
『シオン、気を集中しなければ死ぬぞ!』
『えっ、えっ、えっ…』
次の瞬間、武光の後ろからドス黒く濁った闘気、
強烈な殺気が溢れだしていた。と次の瞬間…
『神眼!!』
武光の体がうっすら光り、
閉じた瞼をゆっくり開いた。
その目は金色に輝き獲物を狙う獣の如く
シオンに狙いを定めていた。
『な、な、な、なんで? お爺…じゃなくて、先生…ど、ど、ど、…』
あっ…
次の瞬間、武光渾身の右の拳が
シオンの顔面めがけて飛んで来た!
『イヤァ~ッ!』
両手で顔をかばい目を閉じて
縮こまっているシオン。
だが、武光の拳はシオンに届いていない。
『……………?』
その手の隙間から正面を覗いて見ると、
目の前数センチの所に少しずつシオンを
拳で貫こうと向かってくる武光の姿があった。
『これって、あの時と同じ…
けど、止まってるんじゃない…
お爺ちゃん、少しずつ動いてる…』
と、シオンが横に身を交わすと
スローモーションの武光が
シオンの動いた方向に目線を送り
再び次の拳を繰り出す。
だが、シオンがこれを避けられない訳がない。
更に次の拳を避けようとした瞬間、
武光はその手を止め直立する。
ただ、鋭い眼孔はシオンに向けられたままだった。
『お爺ちゃん…僕に何が…』
次の瞬間、『バタッ』と音をたて
シオンは意識を失い倒れてしまった。
『綾希子、見定められたのか?…』
『はい。間違いないと思います。』
『うむ。ヤツの言うことに間違いなかった。
シオンは間違いなく祖先の血を、意思を、慈愛を
受けついだ正当伝承者であった。
過去に心眼の中で¨自殺眼¨と言われてきた
¨青い瞳¨の¨青眼¨は
生まれて来たのだが、
悲しい結末を向かえ死んでいった。
まぁヤツ以外の話になるがの…。
しかしシオンは間違いなく
蒼い瞳の中心に金色の光を放っておったわ。
しかし、心眼の力に体の変化が
ついていけないのではあるがのぉ…
シオンが¨蒼眼¨の正当伝承者…か、』
『私はずっと確信しておりました…』
武光は綾希子を見てうなずくと道場を後にする。
綾希子はそれに答える様にうなずくと
シオンを抱き抱え道場を後にシオンを部屋へと
運んでいくのであった。
『シオン様…一生涯貴方にお仕えします…』
二人の姿が徐々に白く消えてゆくと再び
目の前に浮かんだのは窓の外から吹く風に
レースの白いカーテンがなびいていて、
その際のベッドに眠る
シオンの姿があるだけだった…