『父の伝言』
『しおん…しおん…、聞こえるかい?』
『あっ、巧ちゃん、巧ちゃんだぁ!』
『いい加減、¨パパ!¨とか、¨お父さん!¨って
呼んでくれないかなぁ?
けど、なんで巧ちゃんって分かるんだい?』
『だって巧ちゃんは¨ひらがな¨だもん!』
『…? 』
『で、お母さんも¨ひらがな¨でぇ…』
『…』
『でね、お爺ちゃんが呼ぶ時は¨カタカナ¨
なんだけど、お勉強する時は¨漢字?¨で
¨志恩¨なんだょ』
『…そうなんだ。じゃ、分かっちゃうよな(笑) 』
『巧ちゃんは絶対だもん!』
『そっか…絶対かぁ…』
その場を沈黙が続く中、
シオンは鼻唄を歌いながら遊んでる…
『しおん、今は分からないだろうけど、
巧ちゃんも、お母さんも、お爺ちゃんだって
心から゛シオン゛を愛しているんだょ。
残念…残念と言う言葉は正確な言葉ではないかな…
巧ちゃんと、お母さんは今でも
心から愛し合っているんだょ。
けど…なんだろうね…゛シオン゛の言う
¨大人の事情¨ってくだらない理由かな?(笑)
……しおん?』
シオンは遊び手を止めて笑顔で父の方を振り向く。
『あたしも¨巧ちゃん¨大好き!』
巧魅はうつ向き涙を落とす…
『いいかい? しおんは今は17才の女子高生。
この世界での¨5才のしおん¨は、
キミの心の中の逃避場…
つまり、しおんが作り出した幻の世界なんだよ。
17才になったキミになら理解出来るよね。
キミはそこから出なくてはいけない。
今のキミの現実は過酷な物であるけれど、
抗えない真実と言う事であり
受け止めなくてはならない試練でもある。
だからといって悲観しては駄目だよ。
キミは既に多くの愛に包まれているんだから。
そして他の人には持ち得ない
¨大きな力と慈愛¨
を受け継いだんだからね…
さぁ、目覚めるんだ…しおん…しおん…
愛しい、しおん…』
『んん、ん~っ…』
シオンは目覚めるとベッドに横たわっていた。
見馴れた部屋の見慣れた景色…
シオンは自分のベッドに横たわっていた。
『巧ちゃん?あれっ…なんで僕はここに…』
目覚めたシオンは夢と現実に悩んでいた…
悩んでいたが、途中で悩むのをやめた。
そして目を閉じて再び眠りにつくのであった……