明日天気になれ
「ずっと前から高宮が好きなんだ」
瀬能の口から紡がれた言葉に、理子は息をのんだ。
「だから、付き合ってほしい」
理子の手首を攫む瀬能の手は緊張のせいか、わずかに汗ばんでいる。
瀬能からの告白の言葉に、理子の頬は朱に染まる。真剣なまなざしで理子を見つめる瀬能に何か言葉を返さねばならないことは分かるが、心臓が早鐘の様に鳴り響き、頭が真っ白な理子はただ茫然としていた。
「高宮?突然でびっくりしてるよな、ごめん」
突然というが、理子はどこかで予感めいたものがあった。花火大会以降、何となく瀬能との接触が増えていたし、手を繋いだりと言うスキンシップも増えていた。
鈍感などと言われている理子でも何となく好意を寄せられているのかなと思ったが、傷つきたくない一心で瀬能のそぶりに気が付かないふりを決め込んでいた。
真摯に気持ちをぶつけてくれた瀬能が「ごめん」と謝罪の言葉すら口にしているが、そんなこと言わせたいわけじゃなかった。
目を逸らすこともできずに、口をパクパクさせている理子の頬に瀬能の空いている手が伸びる。瀬能は
「泣かせるつもりもなかったんだけどな・・・」と口にして、理子の頬をそっと指の腹で撫でる。
自分でも気が付かないうちに理子は涙を流しているようだった。
(何か言わなくては・・・)
焦れば焦るほどなんといっていいのか分からず、理子の頭の中は混乱の極みに達している。
「答えは今じゃなくていいから、俺とのこと考えてほしい。嫌じゃなければ」
そう言って理子の頭をポンと撫でる瀬能の表情には、寂しさがみえる。理子の手首から瀬能の手が離れたその時、理子は思わず瀬能の手を掴む。そして理子は首を大きく左右に振った。
「い、いやじゃないよ」
「高宮?」
「瀬能君の気持ち、すごく嬉しいの」
嬉しいと自ら口にしてみて、自分の感情を理解する。そう、理子は嬉しかったのだ。
生まれて初めての男性からの告白に戸惑いながらも、瀬能とのことを振り返る。瀬能に対する理子の第一印象はあまりいいものではなかった。日直の仕事をしないで、へらへらしているように見えたから。
しかし、彼の言動に触れるにつれ、その印象は少しずつ払拭されていった。中学時代の嫌な思い出から、男子が苦手であったが、瀬能とは普通に話せるようになった。
花火を見に行ったときには、中学時代の同級生に絡まれた理子をかばい守ってくれた。瀬能の優しくて大きな手が理子の手を包み込んだとき、思いの外安心してしまった。
合宿で流星が流れた時、自分はなんと星に願っただろうか。もう少し瀬能といられますようにと、ひそかに心に思い浮かべたのに自分の心に嘘をついて、理子はまだ名もなき感情に蓋をした。
その蓋を瀬能がいとも簡単に告白と言う鍵を使って、こじ開けてしまった。
「・・・ずっとこうしたかったんだ」
瀬能がそういうや否や、理子は瀬能の腕の中に閉じ込められていた。
「嬉しいっていう、その言葉・・・前向きに受け取っていい?」
理子はそっと肯く。
「やばい、すごく幸せかも」
理子を抱きしめる腕に力を入れると、嬉しそうに瀬能がつぶやく。
「私も・・幸せかも」
理子もそっと瀬能の背中にその両手を回して、力を込める。誰かに抱きしめられることがこんなに幸せだと理子は初めて知った。
「改めて、俺と付き合ってください」
「はい。よろしくお願いします」
お互いに感極まって駅のホームで抱きしめあっていたことに気が付くと、瀬能と理子は目を合わせて照れ笑いを浮かべる。瀬能が自然に理子の手を取り「家まで送るよ」と改札に向かって歩き出した。
あっという間に理子の家の前に到着する。
(ああ・・・別れるのが寂しい・・・)
何となく理子が別れがたく思っていると、瀬能も同じことを思っていたようで思わず笑いあう。
こうやって笑いあったり、喧嘩したり、未来の約束をしたり、デートしたり…2人でいろんな経験が出来たらいいなと理子は瀬能と話しながら、すごい心境の変化だなと理子は考えていた。
瀬能の背中が見えなくなるまで見送りながら、空を見上げれば、雲一つない夜空が眼前に広がっている。
理子の初めての恋の物語はまだ始まったばかり。
今まで読んでいただきありがとうございました。
この作品は中途半端なうえ、無理やり終わらせてしまいました。読んでくださった方には感謝しようもありません。
番外編でちょこちょこ補正・補足できればとも思っていますが、とりあえずこの話はこれで終わらせます。
誤字・脱字を見つけられた方はご連絡ください。




