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1‐「始まらないけど始まる」

話は遡ること…どのくらいだろう、まぁそんなに遠くない昔。

たぶん半年くらい前。


東京都某区の外れ。寂れたビルの六階。

薄汚れたオフィス(の、ようなもの)があった。


乱雑に積み上げられたファイル、

酒瓶、

ビール缶、

応接テーブル、

カップ麺の空き容器、

煙草の吸殻、

ノートパソコン、

ホコリまみれの大衆誌、

ホコリまみれのブラインド

ホコリまみれのテレビ…

「薄汚れた」という言葉が非常に似合う部屋。

その隅っこに鎮座している昔は綺麗だったであろうソファー。

その上で一人のがっしりとした体格の男が大いびきをかいて惰眠をむさぼっていた。


ヨレヨレのYシャツとグダグダのスラックス、光沢をなくしかけた革靴。

正直言ってしまうと「ショボイ」格好の男である。


だがしかしこの男、何を隠そうこの作品の主人公である。



Prrrrr…



高いびきを切り裂いて電話の音が鳴る。

「とっとと起きろ」とでも言わんばかりに。



「…んあ…電話かよ…」


半覚醒状態の脳と身体で電話のコードレス子機を探す。


たしか机の上に置いておいたはずなのだが、ファイルやらスナック菓子の袋やら週刊誌やらが積み上げられていて何処にあるやらわからない。


「だああもう何処だ面倒くせえなああ!」


机の上に山と積まれたまさしく「雑貨」と呼ぶべきあれやこれやを床に放り、なんとかかんとか子機を見つけ出した。

少しは片付ける癖を身につけようか、などという思考が一瞬頭をよぎるが、あくまでその一瞬だけであった。

この男の散らかし癖、無精さは生来のものである。最早処置のしようもない。


Prrr『Pi』


ボタンを押し、騒音でしかない呼び出し音を止める。


「はいはいもしもし、本島探偵社ですけど」


男の名は本嶋亮太。


‐職業:探偵。


「喂,你好〈ウェイ、ニーハオ〉、モトジマさん、元気してるカ?」


電話の向こうから片言の日本語。

明るい調子の老齢の声が響く。


「あら、李老大、まぁ一応元気っすけど…なんすか、また揉め事っすか…?」


眠気を含んだ声の中に、少々剣呑さが混じる。


「对<トゥイ>、察しがいいね、その通り。ちょっと我々の「シマ」にまで入ってきて喧嘩しちゃってる奴らがいてネ」


「うわぁ…なんすかそのバカ達」


この時代にあの『凶星』李老大のエリア内で騒ぐバカがいるとは、何処のにわか者だ一体…と驚きを隠せぬ本嶋。


「うん、ちょっと暴れてる奴らの下っ端っぽいのを「招待」して質問してみたんだけどネ?」


招待。まともな招待なわけがあるまい。何人かで囲んで車にでも放り込んで運んだんだろう。いわゆる拉致である。


「招待って…可哀想に」


『凶星』直々にご招待を受けたのだ。

生半可な質問で済むはずがない。

哀れなる身の程知らずに、心のなかでしばし黙祷を捧げる本嶋。


「あ、大丈夫、没事儿没事儿<メイシァーメイシァー>、死んではいないネ、死にたいとは思ってるだろうけど」


「あ、なんだ、なら良かった…」


死んでないなら問題はない。むしろ俺の黙祷を返せ、などと益体のないことを考えてしまうのも、まぁ本嶋としては無理からぬ事であった。

「なぜ」招待を受けたものが死にたいと思っているのかは聞かない。聞く気もない。

聞いたところでどうせろくな答えは帰ってこない。

1週間は肉を食いたくなくなるような返答を返してくるに決まっているのだ。

この電話相手はそういう「ヤバい」人間である。


「でネ、質問して手に入った情報によると、どーやら「兵士<ソルダート>」と「嫌がらせ〈ヴェクサシオン〉」の連中がやりあってて、その余波がこっちに来てるっていうか、なんていうノ?まぁそんなこんなで2つの組織が我々のところに踏み入ってまで喧嘩しちゃってるみたいネ」


「…………」


無言。静寂。

意図したものではない。

『嫌な予感』に口が動くことを拒否しているのだ。

自然に手が机の上の煙草とライターを求める。


‐「みつば」。安煙草の代名詞的存在だ‐


着火。吸う。吐く。ただの3つの行為が、どうも重苦しく感じる。

立ち昇る紫煙を眺める。もう一口吸う。

肺に煙が満ちる。溜息とともに全力で煙を吐き出す。



「…うわぁ、めんどくせえことになってますね…」



話は始まって早々だが。おそらく此処から先、俺の逃げ場はなさそうだ。

確実に面倒なことに首を突っ込『まれている』と感じた本嶋は、がっくりとうなだれた。


(…起きて早々、なんだかすっごい強い酒が飲みたい。飲んで酔って潰れて全て聞かなかったことになればいい)




本嶋が何を考えようと、無情に話は進んでゆく。






まぁ無情に話は進むけど、異世界への旅はまだしばらく始まらない。


残念。

異世界に行くと思った?残念、しばらくは日本篇でした!

華の都TOKYOは異国人共の魔窟。割とリアルでもそんな感じ。


やっべえノリで書いてるから道筋だったストーリーが存在しねえ。


とりあえずしばらくはアンダーでグラウンドな日本のお話。


この日本編が終わったが最期、一切出てこないであろう組織とかがワンサカ出てきます。たぶん。そんな気がする。

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