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恋愛中毒  作者: みかち
9/9

東京の彼。第8話。入院。後編。

結局、彼の入院は、1週間にもおよんだ。



彼は、暇だとしきりに言った。



私は、休みの日など、朝から晩まで病院にいた。








やっと、ご飯が食べられるようになった彼の前には、重湯があった。



障子を貼り付けるときの、のりみたいなもの。



かわいそうに、最初の食べ物はそれだった。



まったく、食欲がわかなくなった彼は、デザートについてきたヨーグルトをおいしそうに食べていた。



3日間も何も食べていなかった。



ずっと、点滴だけ。



そのあげくに、重湯。



心底かわいそうだった。



少しずつ、胃を慣らしていけなきゃいけないので、しょうがなかったのだ。



毎食、彼は、デザートを食べた。



ヨーグルトだったり、バナナだったり。



彼は、やせこけてしまっていた。



家に帰ったら、おいしいものを作ってあげようと思った。









彼の、今回の病名は、「急性すい炎」だった。



すい臓が、炎症をおこしている。



その原因は、ものすごいものだった。



一緒に、先生から原因を聞かされた。



私たちは、ぽかんとしてしまった。



「ご飯の食べすぎですね」



さらっと、言ってのけた。



要するに、白米、米を食べすぎなんだという。



ちゃんと、消化に必要な液が出ずに、臓器が、炎症を起こした。



ものすごいな、と思った。



人間の体って、そんな簡単なことで、壊れるんだ。



そのとき、人間は、弱いものだと知った。









彼は、1週間後、退院した。



シャバの空気はおいしいと言った。



青い自転車に、荷物を山のように積んで、二人の家に帰った。



退院の日は、ものすごい雨で、駅前の地下街は浸水していた。



私たちの、アルバイト先も、床がびしょぬれだった。



そんな雨も、私が彼の病院につくころには、少しやんでいた。










やっぱり、二人はいい。



彼が戻ってきた部屋は、一人のときとは比べ物にならないくらい、暖かかった。



一緒に、自転車に乗る。



一緒に、エレベーターで9階まで上がる。



一緒に、ドアを開けて、部屋に入る。



私は、ずっと笑っていた。



彼が戻ってきたのがうれしかった。



また、一緒に暮らせることが、うれしかった。



ずっと、永遠に続くと思っていた。



彼と離れるのなんて、考えもしなかった。



また、私たちの時間は動き始めた。




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