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恋愛中毒  作者: みかち
8/9

東京の彼。第7話。入院。前編。

私の体が回復して、しばらくたったころ。



彼の体調がおかしくなった。



彼は、胃が痛いと言い、病院にかかった。



彼は、胃薬をもらい、それでも具合は治らなかった。







本格的におかしいと思い、ご飯は刺激が少ないものを作った。



しばらくして、歩く振動が痛いと言い出した。









私は、彼を青い自転車の荷台に乗せた。



彼を病院に運ぶためだ。



歩道の段差に気をつけながら運転した。



救急の入り口から入った。



廊下は薄暗く、不安な気持ちにさせた。









診察室に一緒に入って話を聞いた。



医者の話だと、こうだった。



「すい臓に、分泌物を送る臓器がおかしくなっている。」



「すい臓」という聞きなれない臓器の名前。



それがどこにあるのかさえ、わからなかった。



もちろん、どんな役割なのかもわからなかった。



彼は、即日、そのまんま入院した。








私は、会社に電話を入れて、彼の会社の上司にも連絡をした。



もちろん、彼の母親にも連絡をした。



入院の手続きの用紙には、「同居人」と記入した。



彼には、この土地で、頼れるのは私だけなのだ。



そのことに、少し優越感を覚えた。



もちろん、そんな状況ではないのはわかっていた。









次の日、私は、朝早く病院を訪れた。



彼のためのジャージや、コップなどを病室に運んだ。



彼は、弱弱しくベッドに横になっていた。



病室はとてもきれいで、ホテルのようだった。



6人部屋で、彼のベッドは廊下側の角だった。



クリーム色のカーテンで仕切られていて、窓がないので、暗かった。









食事制限をされ、点滴が3日間続いた。



3日目にはだいぶ良くなって、食事の時間のにおいがつらいと言っていた。



みんなが食べていると、自分も食べたくなると、食欲も見せた。



私は、仕事帰りに毎日寄った。



何かしらの手土産を持って。



ゲーム、パズル、雑誌。



とにかく暇だというので、時間をつぶせるものならなんでも持っていった。









彼のいない部屋に帰るのは、心底寂しかった。



一人きりで、エレベーターに乗るのも少し怖かった。



私の生活には、彼が絶対的に必要だった。



まだ、もう少し退院には時間がかかるそうだ。



私は、彼の不在に、心から彼の存在の大きさを知った。



彼は、必要なのだ。



男性として、パートナーとして、ひとつの体の部品として。






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