東京の彼。2話目。告白。
それから間もなくして、私達は一緒に住み始める事になる。
私が誘ったのだ。一緒に住むことではなく、家に遊びに来ないかと誘ったのだ。
彼はその日、パンクバンドのライブがあって、渋谷にいた。
「汗をかいて、シャツがぬれて気持ち悪いから」と、言い訳をしていた。
私は、「お風呂を沸かして待っているね」と言い、1時間もしないうちに彼はやってきた。
さっぱりしたような彼の顔を今でも覚えている。
ライブで疲れたのと、ライブのあとのハイテンション。
私にも覚えがあったので、見ていて私も楽しい気持ちになった。
彼は私の家の風呂に入り、私は彼の着ているものを洗濯機にいれ、洗ってあげた。
彼には、着替えを持ってきてねと、伝えてあったからだ。
お風呂から上がった彼は、ビールを飲み、くつろいでいる様子だった。
波長が合ったのだ。
お互いが出すオーラと言うか、雰囲気が、まだ、そんなに親しくなかった私達の間をうめていた。
話をしないでいても、お互い黙ったままでも、気詰まりな感じじゃなかった。
その夜私の布団を半分貸してあげた。
文字通り半分貸すのであって、それ以下でも、それ以上でもなかった。
彼の持ってくる荷物は日に日に増えていった。
Tシャツ、ズボン、靴、スケートボード。
ありとあらゆるものを持ってきた。
アルバイト先の品川から、私のマンションがある川崎までは、駅1つだったからだ。
毎日学校も一緒に通い、アルバイトにも通った。
圧倒的に楽しかった。
彼が自分の住んでいる清瀬に帰ってしまうと、次の日の朝には私が清瀬に駆けつけた。
電車を乗り継ぎ、朝早く、始発ぐらいの勢いで。
付き合う前にする、おおよそのことをしたと思う。
お互いの考えを話し、分かり合おうとした。
いろいろなところに出かけ、食事をした。
一緒に料理を作り、「マズイ」と言いながら食べたりもした。
若かったころの、有り余るほどのエネルギーを全部お互いのために注いでいた。
お互いのことしか考えられなかった。
毎日会い、ほとんど毎日一緒に寝た。
毎日一緒でも不思議と飽きることなく、嫌になることは無かった。
私から言ったんだと思う。彼は、きっとそんなこと言えないって、なんだかすぐにピンときた。
「付き合ってあげてもいいよ」
若かった。かなり若かった。
周りから見れば、すでに付き合っているのも同じだったが、とりあえず言ってみた。
答えは無かったが、ぎゅっと抱きしめられたのを覚えている。