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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第一部  作者: マスター


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9/12

第9話 チリ沖の海に、人工の“湧き上がり”を足してみたら

第8話では、


Blue Pulse Phase 2 をめぐる議論が、海から遠い会議室で続いていること。


争点が「技術そのもの」だけでなく、「どの海でやるか」「誰が払うか」といった人間くさい条件に移っていったこと。


そして主人公が、“外野の作者”からワークショップに招かれる“中のオブザーバー”へと、一歩踏み出したこと。


それらを描きました。


第9話では、いよいよ舞台がエルニーニョの「現場」に移ります。


アニメOPテーマ:温暖化の原因

https://suno.com/song/ffe8ff61-6ef1-42ad-8ff2-ddcd60f97ed8


フンボルト海流が流れるチリ沖。


本来は冷たくて栄養豊富な湧昇域が、スーパーエルニーニョによって「ぬるい、貧栄養な海」に変わりかけている場所。


そこにOBSとUMCを持ち込んだら、何が起きるのか。


その最初の数日間を、現場側の視点も交えながら描いていきます。


「チリだってよ」


ワークショップからの帰り道、AIがさらっと言った。


『Phase 2のメイン実験海域の一つが、チリ沖のフンボルト海流域に決まりそうだ』


「おい待て、それ普通に本気の場所じゃん」


『そうだ』


『エルニーニョのたびに、“冷たい豊かな海”が“一気にぬるくて静かな海”に変わる場所だ』


第1節 フンボルト海流と「海が死んだ日」の記憶


数日後。


ニュースで、チリの港町の映像が流れた。


干された網。

錆びかけた漁船。

インタビューに応じる初老の漁師。


『前のスーパーエルニーニョのときは、魚がぱったりいなくなったんだ』


彼は、海を見ずに言った。


『海の色も匂いも、全部変わった』


『“海が死んだ”みたいだったよ』


「……こういう場所を選ぶのか」


俺は、少し息を呑んだ。


『だからこそ、だ』


AIが、静かに返す。


『ここは、本来なら冷たい湧昇で支えられている海だ』


『それがエルニーニョで止まりかける』


『“止まりかけた拍動を、どこまで補えるか”を見るには、避けて通れない』


第2節 チリ政府のレターと漁師町の掲示板


国際会議とは別に、チリ政府は国内向けの説明会を開いていた。


『我々は、国際プロジェクトBlue PulseのPhase 2に参加します』


『チリ沖の一部海域で、海洋循環ブーストと海面冷却の小規模実験を行います』


テレビでは、官僚の硬い説明が続く。


一方、港町の掲示板には、プリントアウトされたチラシが雑に貼られていた。


「海を守るための新しい実験について」

「海をいじる危険な実験を止めろ」


賛成も反対も、同じ板の上で風に揺れている。


第3節 港の酒場で、Blue Pulse が話題になる日


「で、お前はどっちなんだ?」


薄暗い酒場。


テレビの音は消されていて、代わりにカウンターの男たちが声を張っていた。


『どうせまた、上の奴らが勝手に決めたんだろ』


『でもよ、海がこのまま死んでくよりマシじゃねえのか』


『エルニーニョの年は、どのみちメチャクチャになるんだ。だったら、そのときに試すしかねえだろ』


「……完全に“Phase 2の縮図”だな、これ」


俺は、配信されたドキュメンタリー番組を見ながら呟いた。


『現場の会話は、だいたいどこも似たようなものだ』


AIが言う。


『“何かするのは怖い”と“何もしないのも怖い”が、同じテーブルの上に乗っている』


第4節 チリ沖Blue Pulseチームの顔ぶれ


やがて、Phase 2のチリ沖チームの顔ぶれが公表された。


蒼井。

海洋物理学者。OBS側の責任者。


サンチェス。

チリ出身の若い海洋工学エンジニア。現場統括。


レナ。

UMCの開発企業から派遣された技術者。


それに、チリの海洋研究所からの観測チーム。


「サンチェスって、あの“海は死んでない”って言ってた人?」


俺は、以前のインタビュー映像を思い出した。


『そうだ』


『“エルニーニョのあとに戻ってくる海を、できるだけボロボロにしないで返したい”と言っていた人だ』


「なんか、それだけで応援したくなるな」


第5節 チリ沖OBSの配置図と、UMCの「薄い傘」


Phase 2の配置図が公開された。


海岸線から数十キロ沖。

フンボルト海流が沿岸をなめるように流れる帯状の海域に、点々とOBSユニットのアイコンが並んでいる。


『今回は、OBSユニットを縦一列に並べるんじゃなくて、「斜めの帯」のように配置するんだな』


『沿岸湧昇のラインに沿って、“補助の湧き上がり”をかけるイメージだ』


AIが解説する。


『それに加えて、UMCは岸に近いほうのユニット周辺にだけ、薄く展開する』


「海に薄い傘を差す、って言ってたやつか」


『そうだ』


『エルニーニョ年で通常より暖まりやすくなっている海面を、少しだけ涼しく保つ狙いだ』


第6節 「もし失敗したら」の最悪シナリオ


実験前日のブリーフィング。


船上の小さな会議室で、サンチェスが淡々と話す。


『もしOBSの出力を上げすぎれば、表層の温度が予想より急激に変わるかもしれない』


『もしUMCのミスト量が多すぎれば、局所的な霧や雲の形成が、思わぬ形で風や視界に影響するかもしれない』


『最悪のシナリオは、「漁場の変化」を実験のせいだと判断され、信頼を一気に失うことだ』


「ちゃんと“信頼”を最悪シナリオに入れてるの、リアルだな」


俺は画面越しに呟いた。


『物理的なリスクだけじゃなく、“信用の破壊”もちゃんとリスクとしてカウントしている』


AIが言う。


『どれだけ気をつけても、「エルニーニョのせい」と「実験のせい」を完璧に分けることはできない』


第7節 最初のOBSが、チリ沖でも静かに動き始める


起動の日。


天気は曇り。

海面は、静かとも荒れているとも言えない、中途半端なうねり。


『OBSユニット01、オンライン』


サンチェスの声が、無線越しに流れる。


海面には、ほんの少しだけ違う色の帯ができていた。


「……日本で見たときと、あんまり変わらないな」


俺は、前のPhase 1の映像を思い出した。


『そうだ』


AIが言う。


『どこで動かしても、最初の見た目は地味だ』


『違うのは、“この下にどんな歴史が積もっている海か”という背景だけだ』


第8節 UMCが海面に作った、見えない傘


OBSの起動から少し遅れて、岸に近いユニット群でUMCも稼働を始めた。


海面に、霧と呼ぶには薄すぎる白い層が広がる。


「……これがUMCか」


俺は、ライブ映像を見ながら呟いた。


『そうだ』


AIが返す。


『海を直接冷やすというより、海に入ってくる熱を少しだけ削るための“薄い傘”だ』


映像の中で、レナが計器を見ながら話していた。


『ミスト量を上げすぎないで。視界に影響が出る手前で止める』


『目的は霧を作ることじゃない。海面付近の熱収支を、ほんの少しだけずらすこと』


UMCは、OBSほど分かりやすい装置ではなかった。


深い海から泡を上げるわけでもない。

ソナーに柱が映るわけでもない。

ただ、海と空の境目に、薄い膜のような変化を置くだけだ。


「地味だな」


『地味だ』


AIは即答した。


『だが、海に入る熱を減らす役割は、OBSだけでは代替できない』


『下から混ぜるOBSと、上から熱を削るUMC』


『Blue Pulseは、本来その二つで一つだ』


第9節 漁師のソナー画面に映った「妙な柱」


数日後。


チリのある漁船のソナー画面に、縦に伸びる“妙な帯”が映った。


『なんだ、この筋は』


年季の入った船長が首をかしげる。


『下から上に、何かがずっと上がってきてるみたいだ』


若い乗組員が言う。


『OBSユニットの位置と、だいたい重なるな』


港に戻ると、その話はすぐに広がった。


「実験の泡が魚を追い払ってる」

「いや、逆に餌を上に持ち上げてるんじゃないか」


噂は、まだ事実と呼ぶには早すぎる速度で駆け回る。


第10節 主人公のモニターに、二つのグラフが並ぶ


日本の自分の部屋。


俺のモニターには、チリ沖の観測データがリアルタイムで流れていた。


一つは、水深ごとの温度プロファイル。

もう一つは、漁船から提供される簡易魚群データのヒートマップ。


「……これ、見ちゃうとさ」


俺は、AIに話しかけた。


「もはや“外野”って感じしないんだよな」


『そうだろうな』


AIが応じる。


『Phase 1のときは、数字とグラフだけ見ていればよかった』


『でも今は、その数字の向こうに、具体的な港町と漁船と人の顔がくっついている』


「だから、“続けろ”とも“やめろ”とも軽々しく言えなくなる」


『それでいい』


AIの文字が、少しだけゆっくり流れる。


『物語の中でくらい、“軽々しく決めない人間”の視点を残しておいてもいい』


第11節 海の答えは、まだ「保留」のまま


Phase 2開始から、最初の一週間。


表層水温は、周辺よりわずかに低い状態が維持されている。


一部の水深で、栄養塩とプランクトンの変化が観測され始めている。


漁獲のデータには、まだ「はっきりした変化」は出ていない。


「……海のほうは、“保留”って感じだな」


俺は、データ一覧を眺めながら言った。


『そうだ』


『チリ沖のPhase 2は、“すぐ答えが出ない実験”の典型になるだろう』


『だからこそ、このタイミングで、“続けるか止めるか”“どこまで踏み込むか”を、また人間側が決めなければならない』


「海は何も言わないのに、な」


『海は、ただ変化を記録していくだけだ』


『答えをどう名付けるかは、やっぱり人間の物語の役割になる』


俺は、モニターの明かりを少し絞って、椅子にもたれた。


この世界線の第9話は、どうやら「まだ答えは出ない回」に決まったらしい。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第9話では、


Phase 2の舞台が、エルニーニョの「現場」であるチリ沖フンボルト海流域に移ったこと。


OBSとUMCが、「止まりかけた湧昇」をどこまで補えるのかを試し始めたこと。


港町の漁師、チリ政府、国際プロジェクトチーム、それぞれの思惑が交差しながら、「まだはっきりした答えは出ていない」状態が続いていること。


それらを描きました。


この回で描きたかったのは、


実験のスイッチを入れた瞬間に、「データ」だけでなく「人の生活」とつながる感覚が、一気に重くなること。


そして、海の反応はゆっくりで曖昧なのに、それを「成功」「失敗」「中止」「継続」とラベルづけしなければならないのは、いつも人間側だということ。


です。


次回、第10話では、


チリ沖Phase 2の、もう少し先の時間軸。


「メリット」も「副作用」も、Phase 1よりはっきりしてきた状態。


それを受けて、Blue Pulse全体を「本格運用に近づけるのか」「あくまで実験で終わらせるのか」。


そして主人公自身が、この世界線で「どこまでコミットするのか/どこから先は託すのか」を決めざるを得なくなる局面。


そのあたりを、締めくくりとして描いていく流れを考えています。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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