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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第一部  作者: マスター


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11/12

第11話 温暖化対策を検索したら、答えが“三位一体”だったんだが?

第10話では、


チリ沖Phase 2の時間軸が進み、OBSとUMCを組み合わせたBlue Pulseの「メリット」と「副作用」が、少しずつ輪郭を持ち始めたこと。


OBSは、海の下から循環を補助する技術。


UMCは、海の上から熱入力を少し削る技術。


その二つを組み合わせることで、局所的な海面熱ストレスを和らげる可能性が見えてきた一方で、魚種の偏り、プランクトン構成の変化、霧や視界への影響、沿岸住民の不安といった「数字だけでは扱いきれない問題」も現れ始めたこと。


そして主人公が、Blue Pulseに対して「賛成」か「反対」かを断定するのではなく、


考え続けるプロセスを止めないこと。


ここまでは一緒に考えるが、ここから先は社会に託すこと。


その立場を選ぶところまでを描きました。


本来なら、第10話で物語は一区切りになるはずでした。


しかし最後に、主人公は検索窓にこう打ち込みます。


――温暖化対策 唯一


そこで表示されたのは、Blue Pulseよりもさらに大きな構造でした。


深海エアレーション。


ミスト冷却。


土壌再生。


海を呼吸させ、空と地表を冷やし、土に生命を戻す。


第11話では、主人公がその「三位一体」の構造に気づいていきます。


アニメOPテーマ:温暖化の原因

https://suno.com/song/ffe8ff61-6ef1-42ad-8ff2-ddcd60f97ed8

「……これ、三つそろわないと駄目なんじゃないか?」


俺は、検索結果を見つめながら呟いた。


画面には、AIによる要約のような文章が表示されていた。


地球温暖化の根本的解決には、地球そのものを直接冷却し、炭素固定循環を回復させる「地球直接冷却モデル」が唯一の現実的手段とされます。


そんな文言だった。


「唯一って、強すぎるだろ」


思わず声が出た。


『検索結果の表現は、ときどき強く出る』


AIは、いつもより慎重に返した。


『表示されたからといって、それが科学的に確定したという意味ではない』


「それは分かってる」


俺は、画面をスクロールした。


だが、そこに並んでいる言葉は、俺がこの十話で見てきたものと、あまりにも近かった。


排出削減だけでは足りない。


地球の自己冷却能力の喪失。


微生物の減少。


腐葉土の消失。


海洋循環の停滞。


炭素固定機構の崩壊。


「……おい」


俺は、ゆっくり言った。


「これ、Blue Pulseだけじゃない」


『そうだ』


「海だけじゃない」


『そうだ』


「温暖化対策って、海を冷やす話で終わらないんだな」


『ようやく、そこに来たな』


黒い画面に、白い文字が浮かぶ。


『Blue Pulseは、地球直接冷却モデルの一部にすぎない』


第1節 検索結果に出てきた“唯一”という言葉


「なあ」


俺は、検索結果を見ながら言った。


「“唯一の現実的手段”って言い切るの、かなり危なくないか?」


『危ない』


AIは即答した。


『科学や政策の文脈で“唯一”という言葉を使うときは、慎重であるべきだ』


「だよな」


『ただし、“何を唯一と言っているのか”を分解すれば、意味は少し変わる』


「分解?」


『例えば、温暖化対策にはいろいろある』


『CO₂排出削減』


『再生可能エネルギー』


『省エネ』


『森林保全』


『都市の暑熱対策』


『防災』


『農業の適応』


『それらは全部、重要だ』


「じゃあ、唯一じゃないじゃん」


『個別の対策として見れば、唯一ではない』


AIの文字が続く。


『だが、“地球の冷却能力と炭素固定循環を同時に回復させる統合モデル”という意味では、かなり絞られてくる』


俺は、少し黙った。


「つまり」


「個別の対策がいろいろあるのは当然だけど」


「根本構造としては、“地球を冷やす力”と“炭素を固定する力”を戻さないと駄目ってことか」


『そうだ』


『排出を減らすことは、蛇口を絞る行為だ』


『だが、今の地球では、排水口が詰まり、冷却装置が壊れ、貯蔵庫も傷んでいる』


「蛇口だけ見ていても、部屋の浸水は止まらない」


『第1話から言っていることだな』


「戻ってきたな、最初に」


俺は、少しだけ笑った。


だが、その笑いはすぐに消えた。


最初に戻ってきたということは、俺はまだ入り口に立っていただけなのかもしれなかった。


第2節 Blue Pulseは、海だけの話だった


「俺さ」


俺は、第6話から第10話までの流れを思い返した。


「Blue Pulseで、かなり大きな話をしてるつもりだったんだよ」


『実際、大きな話だ』


「OBSで海を混ぜる」


「UMCで海面を冷やす」


「チリ沖で試す」


「漁師や島国代表や国際会議まで出てくる」


「正直、これで温暖化対策のかなり本丸に触れた気になってた」


『触れてはいる』


AIは否定しなかった。


『ただし、それは“海の本丸”だ』


「海の本丸」


『そうだ』


『海洋熱の蓄積』


『鉛直循環の弱化』


『湧昇の停止』


『植物プランクトンの低下』


『海洋炭素吸収源の弱体化』


『Blue Pulseは、それらに対する技術的な介入だ』


「でも、地球全体じゃない」


『そうだ』


AIの返事は短かった。


『海だけを呼吸させても、陸が死んだままなら足りない』


その一文で、俺は少し息を止めた。


「陸が死んだまま」


『土壌だ』


『森林だ』


『微生物だ』


『腐葉土だ』


『草地だ』


『農地だ』


『砂漠化した土地だ』


『都市の熱だ』


『海が熱を抱えている一方で、陸も炭素固定源として弱っている』


「……だから、土壌再生が出てくるのか」


『そうだ』


『海の循環だけを戻しても、陸の炭素固定源が戻らなければ、地球の呼吸は半分しか戻らない』


第3節 三位一体の一つ目――深海エアレーション


AIは、画面に新しいメモを表示した。


1. 深海エアレーション

 海洋循環の再起動

 海洋炭素吸収源の回復


「OBSと同じものか?」


『近い』


『厳密には、OBSは物語内での実装名だ』


『深海エアレーションは、より広い概念として考えればいい』


「深い海に空気を送る」


『そうだ』


『圧縮空気や微細気泡を深い層に送り込み、上昇する泡の流れで海水を動かす』


『それによって、表層と深層の混合を助ける』


『深層の冷たい水、酸素、栄養塩を動かし、植物プランクトンが働ける条件を取り戻す』


「植物プランクトンが戻れば、CO₂を吸う」


『それだけではない』


AIは続けた。


『海の食物網の底が戻る』


『魚の餌が戻る』


『一部の炭素が深い海に運ばれる』


『海が“熱の受け皿”であるだけでなく、“炭素吸収源”としても再び働く可能性が出てくる』


「つまり、深海エアレーションは」


俺は、ゆっくり言葉にした。


「海の心臓マッサージであり、海の炭素固定源の再起動でもある」


『そうだ』


『第5話で見た“海の心臓マッサージ”は、その一部だった』


俺は、あらためて思った。


Blue Pulseは、海を冷やす話であると同時に、海の炭素吸収源を取り戻す話でもあったのだ。


第4節 三位一体の二つ目――ミスト冷却


AIは、次の項目を表示した。


2. ミスト冷却

 気化熱による広域冷却

 海面と地表の過剰加熱を抑制


「これはUMCだよな」


『そうだ』


『ただし、UMCという名前は、超音波冷却ミストという一つの方式を指している』


『ミスト冷却全体としては、もっと広い』


「気化熱で冷やす」


『水が蒸発するとき、周囲から熱を奪う』


『これは自然の基本的な冷却原理だ』


『打ち水、汗、森の蒸散、雲の形成』


『地球はもともと、水の相変化を使って熱を逃がしている』


「つまり、ミスト冷却は、その自然の冷却を人工的に補助するってことか」


『そうだ』


『海面』


『都市』


『砂漠』


『乾燥した土地』


『熱を持ちすぎた場所で、水を微細化し、気化熱を使って局所的に熱を削る』


「第9話では、海に薄い傘を差すって言ってたな」


『あれは海面版だ』


『だが、地球直接冷却モデルでは、海だけではない』


『都市のヒートアイランド』


『砂漠の表面温度』


『乾いた農地』


『沿岸部の熱波』


『そうした場所にも応用できる』


俺は、窓の外のコンクリートを見た。


夏になれば、そこは昼間の熱を夜まで吐き続ける。


地面が熱を持ち、建物が熱を持ち、道路が熱を持つ。


「ミスト冷却って、単に涼しくするだけじゃないんだな」


『そうだ』


『過剰な熱入力を削ることで、水循環、植物、微生物、土壌の回復条件を整える』


「冷却が、土壌再生の前提にもなる?」


『その通りだ』


『熱すぎる土に、微生物は戻りにくい』


第5節 三位一体の三つ目――土壌再生


三つ目の項目が表示される。


3. 土壌再生

 腐葉土+微生物

 陸域炭素固定源の回復


「ここだよな」


俺は、画面を見ながら言った。


「正直、温暖化対策で“腐葉土”って言われても、普通はピンと来ないと思う」


『そうだろうな』


『多くの人は、温暖化対策というと、太陽光パネル、風力発電、EV、CO₂回収装置を思い浮かべる』


『腐葉土や微生物は、地味すぎる』


「でも、第2話でやった炭素固定システムの話に戻るんだよな」


『そうだ』


『植物がCO₂を吸う』


『葉や根や枝になる』


『それが落ちる』


『微生物や菌類や小さな生き物が分解する』


『腐植になり、土に炭素が蓄えられる』


『この流れが壊れたとき、陸域の炭素固定源は弱る』


「つまり、土に生命がないと、CO₂を固定し続けられない」


『そうだ』


『木だけ植えても、土が死んでいれば長続きしない』


『畑だけ作っても、微生物がいなければ炭素は戻らない』


『草を全部刈り、落ち葉を全部捨て、有機物を燃やし、土を裸にしていれば、炭素固定源は回復しない』


「……耳が痛い文明だな」


『かなりな』


俺は、検索結果にあった「腐葉土」と「微生物」という言葉をもう一度見た。


温暖化対策という巨大な言葉の中に、落ち葉と土と菌がいる。


そのことが、妙におかしかった。


そして、妙に本質的だった。


第6節 多種雑草は、敵じゃなくて回復装置だった


「でさ」


俺は、少し気になっていた言葉を口にした。


「多種雑草による生態系回復ってやつ」


『ああ』


「雑草って、普通は邪魔者扱いだろ」


『農地や庭の管理という意味では、邪魔者に見えることもある』


『だが、生態系の初期回復という視点では、雑草は重要な役割を持つ』


「どういうことだ?」


『裸の土に、最初に根を張る』


『地表を覆って乾燥を防ぐ』


『根で土をほぐす』


『枯れたあと、有機物になる』


『多様な昆虫や微生物の足場になる』


『種類が多ければ、単一作物よりも環境変化に強い』


「つまり、雑草は土壌再生の先遣隊みたいなものか」


『そう表現していい』


『もちろん、外来種や侵略的な植物の問題は別に考える必要がある』


『だが、“草を全部敵として排除する”という発想は、土壌再生とは相性が悪い』


俺は、街路樹の根元に生えている草を思い出した。


いつもなら、ただの雑草として見ていた。


でも、あれも小さな土壌再生装置だったのかもしれない。


「多種雑草って、三位一体の外側じゃなくて、土壌再生の実践形なんだな」


『その理解でいい』


『土に生命を戻すとき、最初から立派な森を作る必要はない』


『まず、地表を覆い、有機物を戻し、微生物が住める環境を作る』


『そこから森や草地や農地の回復が始まる』


第7節 砂漠の冷却・緑化は、三位一体の応用だった


「砂漠の冷却・緑化は?」


俺は続けて聞いた。


『それも、三位一体の応用だ』


AIが即答した。


『砂漠や乾燥地では、まず熱が強すぎる』


『地表温度が高く、水がすぐ失われ、微生物が定着しにくい』


『そこにミスト冷却を使えば、局所的に熱を下げ、水分条件を少し改善できる』


「そこに草や有機物を入れる」


『そう』


『多種雑草や耐乾性植物で地表を覆う』


『有機物を入れる』


『腐葉土化を進める』


『微生物を戻す』


『少しずつ土が水を保持できるようになる』


「つまり、砂漠緑化って、ただ木を植える話じゃないんだな」


『むしろ、いきなり木を植えて終わりにすると失敗しやすい』


『冷却、水、微生物、有機物、草、低木、樹木』


『段階が必要だ』


「三位一体の地上展開か」


『そうだ』


『海では深海エアレーション』


『地表ではミスト冷却』


『陸では土壌再生』


『砂漠では、その三つのうちミスト冷却と土壌再生が特に強く出る』


俺は、砂漠に霧が流れ、地表に草が広がり、その下で微生物が増えていく映像を想像した。


それはSFというより、失われた地球の機能を少しずつ縫い直す作業に見えた。


第8節 CO₂削減はどこへ行ったのか


「でもさ」


俺は、少し不安になって聞いた。


「こういう話をすると、“CO₂削減はもういいのか”って誤解されそうじゃないか?」


『そこは絶対に誤解させてはいけない』


AIの返答は、はっきりしていた。


『CO₂削減は必要だ』


『化石燃料由来の排出を減らすことも、省エネも、再エネも、産業構造の転換も必要だ』


「じゃあ、三位一体は何なんだ?」


『追加レイヤーだ』


『第4話と同じだ』


『排出削減は蛇口を絞ること』


『深海エアレーションは、海の循環ポンプを回復させること』


『ミスト冷却は、過剰に入り続ける熱を削ること』


『土壌再生は、壊れた炭素固定タンクを修理すること』


「蛇口、冷却装置、排水口、貯蔵庫」


『そうだ』


『蛇口だけ絞っても、床にたまった水はすぐ消えない』


『排水口を直さなければ、水は抜けない』


『貯蔵庫を直さなければ、またあふれる』


『冷却装置を直さなければ、部屋そのものが熱くなり続ける』


「……全部やるしかないのか」


『全部を同時に始める必要がある』


AIの言葉は重かった。


全部を完璧にやる、ではない。


全部を同時に始める。


その違いが、妙に現実的だった。


第9節 三位一体でないと、どこかが詰まる


「一つずつ考えるとさ」


俺は、メモ帳を開いた。


「深海エアレーションだけやった場合」


『海の循環と炭素吸収源の一部は戻るかもしれない』


『だが、陸の土壌が死んだままなら、陸域の炭素固定源は戻らない』


「ミスト冷却だけやった場合」


『熱ストレスは下げられるかもしれない』


『だが、海洋循環や土壌微生物が戻らなければ、固定と循環は弱いままだ』


「土壌再生だけやった場合」


『陸の炭素固定源は回復するかもしれない』


『だが、海が熱を抱え、海洋熱波が続けば、気候の揺らぎは止まらない』


俺は、ペンを止めた。


「つまり、どれか一つだけだと、必ず別の場所が詰まる」


『そうだ』


『温暖化は一つの原因で起きているのではない』


『だから、一つの対策だけで根本的に戻すこともできない』


「CO₂だけじゃない、って第1話で言ったのと同じ構造か」


『同じだ』


『単独悪者説を捨てるなら、単独救世主説も捨てなければならない』


その一文で、俺は思わず笑ってしまった。


「CO₂単独悪者説の次は、技術単独救世主説かよ」


『人間は単独犯と単独ヒーローが好きだからな』


「物語的には分かりやすいからな」


『だが、地球は群像劇だ』


その言葉は、妙にしっくり来た。


海。

空。

土。

森。

微生物。

草。

人間。

都市。

砂漠。

雨。

プランクトン。


地球は、一人の敵と一人の英雄で動いているわけではない。


全部がつながって、壊れ、またつながろうとしている。


第10節 地球直接冷却モデルという名前


「地球直接冷却モデル、か」


俺は、検索結果の言葉をもう一度読み上げた。


「名前としては、かなり強いよな」


『強い』


「地球を直接冷やすって、誤解されそうでもある」


『されるだろうな』


『“地球の温度調整装置を人間が支配する”と受け取る人もいる』


『“ジオエンジニアリングだ”と警戒する人もいる』


『“そんなことは不可能だ”と笑う人もいる』


「実際、全部間違いとも言えない」


『そうだ』


『だから言葉の定義が重要になる』


AIは、少し間を置いてから続けた。


『ここでいう地球直接冷却は、地球を機械のように操作するという意味ではない』


『自然が本来持っていた冷却・循環・固定の仕組みを、人間の技術で補助するという意味だ』


「自然補完か」


『そうだ』


『海の循環を補助する』


『水の気化熱で過剰な熱を削る』


『土壌の微生物と腐植を戻す』


『これは、自然の外側から命令する発想ではなく、壊れかけた自然循環の内側に補助輪をつける発想だ』


「補助輪か」


『自転車に乗れない子どもを、補助輪で支えるようなものだ』


『ただし、その子どもは地球で、その原因を作ったのも人類だ』


「笑えない比喩だな」


『笑えないな』


第11節 主人公が見ていたものは、まだ半分だった


俺は、これまでの話を振り返った。


第1話。


CO₂だけを見ていた俺は、AIに初手で論破された。


第2話。


炭素固定システムを叩き込まれた。


第3話。


スーパーエルニーニョが、ただの運悪い年ではないと知った。


第4話。


CO₂を減らしても、海の熱はすぐには減らないと知った。


第5話。


海に心臓マッサージをするOBSを知った。


第6話から第10話。


Blue Pulseという“やる世界線”を見た。


「……でも、まだ半分だったんだな」


俺は、画面を見ながら言った。


『半分というより、海側の入口だな』


AIが返す。


『温暖化対策の全体像は、海だけではない』


『空と地表』


『土と微生物』


『都市と砂漠』


『森林と草地』


『そして、それらをつなぐ水循環』


「水循環もか」


『当然だ』


『ミスト冷却は水の相変化を使う』


『土壌再生は水を保持する土を作る』


『森林や草地は蒸散で大気を冷やす』


『海は蒸発で熱を逃がす』


『全部、水が関わっている』


「水、炭素、熱、生命」


『その四つが分かれて見えるうちは、対策も分断される』


『一つの循環として見えたとき、ようやく三位一体の意味が分かる』


俺は、ゆっくり息を吐いた。


温暖化対策。


その言葉が、前よりもずっと大きく見えた。


第12節 次に見るべきもの


「じゃあさ」


俺は、検索結果を閉じずに、AIに話しかけた。


「次に見るべきものは何だ?」


『最初に戻る』


AIは、すぐに答えた。


「最初?」


『エルニーニョだ』


俺は、眉をひそめた。


「第3話でやっただろ」


『やった』


『だが、あのときのお前は、まだ三位一体を知らなかった』


『海洋熱とエルニーニョを、主に海の問題として見ていた』


「今なら違う?」


『違う』


AIの文字が、静かに流れる。


『スーパーエルニーニョは、海だけの問題ではない』


『熱循環』


『水循環』


『栄養循環』


『酸素循環』


『生物循環』


『炭素循環』


『それらが同時に揺さぶられる複合リスクだ』


「……また重い話になりそうだな」


『最終話にふさわしい』


「最終話?」


『十二話構成にするのだろう?』


俺は、思わず苦笑した。


「アニメの1クールみたいに、な」


『なら、第12話では、第3話の問いに戻るべきだ』


『スーパーエルニーニョは、ただの“運悪い年”なのか』


『それとも、地球の循環システムが同時に揺さぶられるサインなのか』


「それで、あの赤い地図を見るわけか」


AIは、少しだけ間を置いた。


『そうだ』


『世界中が赤く染まった、複合リスクの地図だ』


俺は、画面の別タブを開いた。


そこには、以前見たエルニーニョの記事が残っていた。


そして、その中にある一枚の図。


太平洋の赤。


インド洋の赤。


北米の熱。


南米の豪雨。


アフリカとオーストラリアの干ばつ。


サンゴ礁の紫。


俺は、まだその図を開かずに、カーソルだけを合わせた。


「……これ見たら、たぶん言うぞ」


『何を?』


「これ、詰んでないか、って」


AIは、すぐには返事をしなかった。


少ししてから、黒い画面に白い文字が浮かぶ。


『その問いに答えるために、第12話を書く』

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第11話では、主人公が検索結果をきっかけに、Blue Pulseよりもさらに大きな構造――地球直接冷却モデルに気づいていく回として描きました。


第10話までで見てきたBlue Pulseは、OBSとUMCを組み合わせて、海の熱と循環に働きかける構想でした。


しかし、それだけでは足りません。


温暖化の根本的な問題は、海だけではなく、空と地表、土壌と微生物、森林や草地、砂漠化した土地、そして水循環と炭素循環全体に広がっています。


今回、主人公が整理した中核は、次の三つです。


深海エアレーション。


海洋循環の再起動と、海洋炭素吸収源の回復。


ミスト冷却。


気化熱による広域冷却と、海面・地表への過剰加熱の抑制。


土壌再生。


腐葉土と微生物による、陸域炭素固定源の回復。


この三つは、別々の対策ではありません。


海を呼吸させること。


空と地表を冷やすこと。


土に生命を戻すこと。


それらが同時に動いて初めて、地球の冷却能力と炭素固定循環を回復する道筋が見えてきます。


多種雑草による生態系回復や、砂漠の冷却・緑化は、この三位一体の外側にある別物ではなく、土壌再生とミスト冷却の応用として位置づけられます。


本作の立場は、CO₂削減を否定するものではありません。


CO₂削減は必要です。


ただし、それは蛇口を絞る行為です。


今必要なのは、蛇口を絞りながら、海の循環ポンプを戻し、過剰な熱を削り、壊れた炭素固定タンクを修理することです。


次回、第12話では、物語は第3話の問いに戻ります。


スーパーエルニーニョは、ただの“運悪い年”なのか。


それとも、すでに温暖化した地球の上に重なる、複合的な循環崩壊のサインなのか。


主人公は、世界中が赤く染まった複合リスクの地図を見て、あらためてこう呟くことになります。


「これ、詰んでないか?」


その問いに、AIがどう答えるのか。


次回、最終話です。


深海エアレーションとは何か

https://note.com/inchacomusho/n/n3d91983e0ad4


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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