第一章-③ 用事はなんだ
「うわっ」
四辻くんは棚から飛んできたそれに驚いて背中を反らせたが、
「痛てっ」
「あっ」
それは一度額にぶつかり、そのままの勢いで天井の方に飛んでいった。
反射的に飛んでいく物の動きを目で追い、照明の傍に張り付いたそれをなんとか確認しようとするも、窓の無い部屋を照らすための蛍光灯はあまりに眩しかった。
いきなり後ろでどがっ、と痛そうな音がした。振り返ると、頭にものが飛んできた四辻くんが背中から床に倒れていた。
「いってー、こいつだったのかよ……、こんなところに何盗むもんがあるってんだ……」
「ほんっとどこにでもいるし、すーぐ故障するし、こんな警備ロボット使うくらいならいないほうがよっぽどましね。捨てらんないのが癪だわ」
立ち上がった四辻くんと上村さんがそんなことを言っている間にロボットはどこかの棚に隠れてしまったようだ。
「あんのオンボロロボット、どこいった!」
普段から鬱憤が溜まっていたようで、必死の形相で探している。
「こんな迷惑なロボットが何台もあるのは少々危ないのではないかな?今すぐにでもアップデートするべきだと思うよ」
「まあそうね。とっとと地図を見つけてコンピ研とその顧問に苦情言いにいきましょ」
「へーえ、あれは生徒たちが作ったのか。感心するな」
「でも、あんなに危ないものをほっといてもいいんですか?」
「別に少しくらい邪魔されたところであの大きさで何ができるっていうんだ、ちょっと小突かれても大した痛くないだろうよ」
四辻くんが変な対抗心を燃やしているようだが、できれば安全を確保して地図を探したい。本人が痛くないって言ってるしどうなんだろう……いや、やっぱり絶対痛い。
「いや、あの、すっごい痛そうでした……」
「お前が『うわ痛そう引くわー』って思ったから痛くなるんだ!俺もお前がぶつかった時に『痛くなさそー』って思ってやるから!」
えぇ……?
「わ、わかりました」
熱血理論でそんなに変わるはずないと思うが、地図を探すためにも、とりあえず返事をすることしかできなかった。上村さんも言ったようにロボットを捕まえることが目的ではないのだ。
全員で地図探しを再開してから、四隅に画鋲の穴が空いた地図はすぐに見つかった。地図を描き写したかったが、地図と手帳を広げるためのスペースがなかったため一度部屋を出る。
近くにある教室の机を借りてA4サイズのノートと、一階層が机一つ分もある地図を広げて、別々のページに輪切りの校舎を丁寧に描いていく。そういえばもうそろそろ問井先生の仕事が終わる時間だろう。シャーペンの動きを早め、教室の位置と大体の用途を書き足して地図が完成した。
「ゆっくりね、別にいいけど」
「ふーん、模写、うまいじゃないか」
「正しく描かなきゃ正しく覚えられないですし」
「んじゃ、用も済んだし地図戻しに行くか」
元以上に汚くしてしまった部屋に戻り、散らかったものを復元していく。ロボットはどこかにいったまま見当たらないが、滅多に入る人が居なさそうな部屋だしまあいっか。
職員室に戻ると、本来の目的である問井先生がいた。
「おー!久しぶりだね、君たち!転校生組は二ヶ月ぶりかな?ようこそ我らが学園へ!」
問井先生は十一月の記憶と違わず、人当たりの良さそうな顔で話しかけてきた。
「人を三十分も待たせておいてよく言いますね」
さっきまで学校をまわってたから忘れてたけど、この先生生徒に仕事押し付けてたんだった。
「えー?冬休みの三週間と比べたら些細なことでしょー?今年もよろしくねー」
「私は先生に会いたくないし雑用もしたくないって言ってるんですよ、分かってますか?」
「そんなこと言っちゃってぇ、どうせ僕に電話する前に『助けてあげようかな』とか考えてたくせに」
「……そんなことないです。ほらとっとと案内のしてください、私もう疲れることしませんから」
どうやら図星だったらしい。無理していい人ぶってると思った自分を恥じる。
「トイセンさ、どこで何してたのさ」
「うん?あぁーそうだ!その弁明を聞く前に2人とも電話切っちゃうからさー、本当に仕事をしてたんだよ、押し付けられて予定に割り込む形にはなっちゃったけど」
勤務中だったにしてはすごくふざけた口調だったよなあ、真面目に話を聞いてるとは思われないくらい。でも、どんな仕事か気になる。雪の後始末とかなのかな。
「そりゃ、いつも通り体育館の裏に出た……」
「おい待てトイセン、またアレか?」
あれ?
「そうそう、今日も寒いのによく出てくるよねー。やっぱり厚着すればよかったよ。あ、そうそう、厚着といえばさ、あのただの着ぐるみになった……」
「そのどうでもいいことはもう今度でいいです、ほらもうわかりましたから案内に戻りますよ」
着ぐるみ?あ、あの倉庫にあったやつかな。
「ただの着ぐるみとは?」
「なんだろう、さっきいた倉庫にあったピエロの着ぐるみかも……わかりません」
僕ともう1人の転校生でひそひそと話をする。
「でも、『普通』があるなら『じゃない方』もあるんでしょうか?」
「普通ではない着ぐるみとはなんなんだろうかねぇ。今度先生に聞いてみよう」
着ぐるみを着てする仕事にも何種類かあるのかな。それで大変な方から楽な方の仕事に移ったとか。
2人で話している間に、3人の中では何か意見がまとまっていたようだ。
「いや、この子達もそのうち聞くことになるだろうしもう言ってしまってもいいかな。隠すのも無理だし」
「先生、普通じゃない着ぐるみとはなんなんですか?」
「「「えっ」」」
今?!もう少し後で聞くのかと思っていただけに驚いた。他2人の生徒も同様だ。
「ほらね、言った通り聞いてきた」
「それはもちろん気になりますとも。あれ以上に奇妙かもしれないのならば効果感が湧きます」
話している2人はややずれた受け答えをものともせずに会話をしてゆく。
「そうだね。それでは私は答えましょう。聞かれた質疑に返答しましょう」
「この学校にはね、お化けが出るんだよ」
みなさん、お久しぶりです!おはようございます!
宣言よりも一月くらい遅れてしまいましたが、続きを出すことができて安心です!
え?正月何してたのかって?ゆ、ユックリシテルヒマハアンマリアリマセンデシタ。体重も1キロしか増えませんでした……
やや独り言になってしまうんですけど、書いてる上で「あーっ1話前のあそここうすればよかったー!」ってなることが多くって、一章ごとに投稿した方がいいのかなーって。後から投稿済みの話を編集することもできるんですけど、あんまりそういうのはしたくないで迷ってるんです。
とりあえずは一話ごとに書いていって一章書き終わるごとに編集していくことにしました。編集したら追記していく予定なので、今後もぜひ読んでいってください!(きらりーん⭐︎)




