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第一章−② 空き巣の後みたいな部屋

一月二十日 月曜日

 今日は、転校してから初めての登校日でした。だからある先生に案内してもらうはずだったけれど、あるとても親切な生徒(もしかしたらわざわざ優しく見えるように演技していたのかも)曰く、その先生は学校案内にあまり適していないというので、僕ともう1人の転校生はその生徒に案内してもらっています。地図を書いておきたいのですが、まだ行ってないところがあるので今後1週間の課題です。


「ところで、2人はどうしてこんな時期に転校してきたのかしら?」

 僕が手元のメモ帳に日記を書いていると、件の生徒が質問を訊いてきた。僕が口を開くより先に、同時に転校してきた少女が答えた。

「私は両親の仕事の関係でね、別に転勤族ではないけれど」

「ふーん、年末の異動なんて珍しいわね、3月か9月くらいだけだと思ってたわ。」

「左遷ではないと両親が言っていたし人手が足りなくなったのではないだろうか?現に引っ越してからせかせかと忙しい以外に変わったことはないさ」

「まあ、特に変化がないならきっと問題ないんでしょ、あなたは?」

「えっと、……なんていうか、前の学校に、少し、馴染めなくて、」

「……そう、まあいいわ、もうすぐホームルーム教室だからここだけでも覚えておいて」


 机、椅子、黒板。公立の学校で見たことのあるものと大きな差はなかった。同じなのは見た目だけで使い勝手が良かったりするのだろうか、私立だし。

「やっぱり学園本部と同じなんだねぇ」

「あら、あなた本部から移ってきたの?」

「えっ!本部ってこの学園支部の本部!?」

「こっちからあっちに行く人もいるだろう?逆だって居るとも、そんなに珍しくもないさ」

 転校生が腕を広げ、手のひらを上に向けて高いあっちと低いこっちを表現する。肩と胸ぐらいの高さだけどもうちょっと差があるのでは……?

「国立の推薦を受けられる学力があるのに蹴る人より珍しいわよ、だって本部の方がウチよりずっと偏差値高いじゃない」

 支部はそこまででもないけど、本部は名門私立とも肩を並べるほど入試の難易度が高いのだ。そんなところからの転校生が同級生なんて半ば信じられない。

「別に偏差値だけで学校を決めてるわけでもないとも、それに勉学はどこでも励む人次第だ、こっちに来た理由はいろいろ、さ」

 いつのまにか顔の横で (ろう) の封がしてある、ごく一般的な茶封筒を指で挟んでそう言った。ミスマッチ感があるが彼女が動かしているとなんだか様になっている。

「……そうね、いろいろ、ねぇ」

 在校生は何かに気付いた様子で封筒とストラップを握ったままのスマホを流し見、最後にこちらをちらりと見てしみじみつぶやいた。

「学園長からなにか書類をもらってきたから問井(とい)先生に渡せって、中身は知らないけど予想はできるとも」

 女子は封筒を見るだけで何が入ってるのかわかる能力でもあるのだろうか。それに部外者とはいえ封筒についてのけ者にされたままで何も理解できていない。

 あぁ、なんだか居づらいなぁと思った矢先、教室の外から駆け足の音が聞こえた。あれ?今日は休校になったんじゃなかったっけ、先生かなぁ。上村さんも同じことを思ったらしく、苦虫を噛んだような顔をして人差し指を立ててこっちを見た。

上村(うえむら)ぁー居るかぁー?」

 さっきの電話の声ではないことに安堵した様子で、彼女が教室から顔を出した。

「居るからあんまり大きな声を出さないでちょうだい、あとアイツ連れてきたりしてないわよね」

 そんなにあの先生が嫌いなんだろうか。

「俺は普段からアイツの手伝いをしてる訳じゃないししたくもないね。というかいつもは村上の方がアイツの後始末してるだろ。さっきアイツから電話が来て『村上のとこに行って伝言してくれ』って言われて驚いたぞ」

 アイツアイツと酷い言われようの先生に対して少し同情する。学校の説明をしてくれた時はとても親切で親しみやすそうな先生だったのに。人は見た目では分からないものだ。

「君たち転校生?まあ上村が連れてるんだからそうなんだろうな、俺は四辻(よつつじ)な、こっから(こっから?)ヨロシク」

 ピアスとか指輪とかつけてそうな感じの少年は僕たち2人に向けてそう名乗った。

「アイツの仕事はあと15分くらいで終わりそうだからもうちょい学校案内を続けててーって言われたが、なんか周りたいとかある?」

「私はもう充分だな。君は、どこか見たいものはあるかい?」

 そうだ地図!とにかくこれを見て描いておけば困らないだろう。

「じゃあ地図、学校の地図があるところに案内してください」

「ちず?そんなものあったか?」

「教室ごとに避難経路が描かれたやつもあるけど判りづらいわね」

「なんか学校祭の時とか参観日の時にでるでっかいやつないっけ」

「職員室とかに置かれてなかったかしら」

「そんな気がする。ほんじゃ職員室に向かうか」


 職員室に向かうと慌てている先生たちとのんびりしている先生たちが数人いた。どうやら雪の対応という仕事が増えた方と授業をしなくてよくなった方がいるようだ。四辻くんがのんびりしている先生たちのなかでもスーツを着て偉そうな先生に話しかけた。

「教頭先生、問井先生から転校生の案内を任せられたんですけど、なにか来客向けとかに使ってる学校内の地図とかってありますか?」うわっ四辻くん敬語喋った。

「そうですねぇ、そこの倉庫に入ってると思います。さっきまで佐々木先生が使ってたので鍵は空いてると思いますが、冬休みに掃除してもまだ散らかっているので気をつけてくださいね」

 教頭先生にお礼を述べて倉庫に向かうと、思ってた数倍汚かった。床に散乱しているA4プリントや何かの機械の部品、段ボールに詰められたチョーク等消耗品とかはともかく、動物の絵が描かれた空の袋やピエロの着ぐるみや、——ピエロって普通メイクじゃなかったっけ?—— や、刷毛(はけ)とペンキとか、学校祭で使う道具みたいな雑多な物が詰め込まれていた。

「他の人には迷惑かけるなって言ってんのに、アイツここも自分の物置にしてんのかよ」

「きっと耳が節穴なのよ。私は2年前からそう思うことにしてる」

「俺もそうする」

 そんな愚痴を言いながら2人は地図を探している。探すのを手伝おうと思い、なるべく物を動かさないように気をつけながら棚を探していると棚の奥から何かがきらりと光った。

 ? なんだろう?よく見てみると表面がツルツルした物が小刻みに動いていてそれに光が反射したようだ。

「この部屋って動くロボットとかしまってるんですか?」

「なんだそりゃ?ったく、アイツ電源つけっぱでなに持ち込んだんだよ」

 四辻くんが棚の手前のものを手に持ってどかすと奥から何かが勢いよく飛び出してきた。


続く

みなさんお久しぶりです!おはようございます!

 投稿頻度10日に一回なんて大口叩いてたけど趣味でやるのは難しかった……。少し落として一月に2回を目指して不定期投稿頑張っていきます!それとは別に私事が忙しくて年越しか冬休みシーズンまで投稿できなさそうで悔しくて泣きそう…(しくしくずびー)

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